年収1000万円。サラリーマンにとっては、憧れの一つであり、大台に乗ったね!などと言われることもしばしば。ある意味、成功したサラリーマンの象徴のように見られています。では、そんな年収1000万円の生活とはどんなものなのでしょうか?
手取りはどのくらいか?
年収1000万円の人の手取りはどのくらいかというと、だいたい700〜720万円くらいです。ボーナスと月給の比率にもよりますが、月の手取りが45万円、年2回のボーナスが90万円といったところ。多いと思いますか? 少ないと思いますか?
30%近くが引かれてしまうわけですが、その内訳は次のような感じです。試しに、年収1000万円と1500万円、2000万円を並べてみましょう。データは、年収別 手取り金額 一覧 (年収100万円~年収1億円まで対応) |酒居会計事務所の税金ブログから。
年収が上がるに連れて、どんどん手取りの比率が下がっていきます。その理由はもちろん「所得税」です。累進課税制度だけあって、所得税率の伸びが凄いです。ちなみに、健康保険料は増加はするものの、年収1700万円で上限に達し、そこからは年収が上がっても増えません(96万9936円)。厚生年金保険料はもっと上限に達するのが早く、年収730万円でマックスです(68万760円)。
年収1000万より、夫婦で500万+500万が美味しい
よく言われるのが、年収1000万円よりも、夫婦で500万円+500万円のほうが手取りが増すということです。グラフにすると次のようになります。夫婦ペアのほうが年間で50万円も手取りが増えます。月間で4万円ちょっとですから、けっこう違いますね。
ちなみに、このグラフは500万円の税金をそのまま2倍にしていますが、実際は扶養控除などで税金が変わってきます。あくまで参考まで、ということで。
手取り720万円の生活は?
では年収1000万=手取り720万円の生活とはどんなものでしょうか?これを単純に12で割って月額にすると60万円になります。これは、家賃次第で生活レベルがけっこう変わる数字です。
よく言われる「住居費は手取りの3分の1」というルールに従えば、家賃またはローン(+管理費+修繕積立金+固定資産税)の支払いで月に20万円を支払えます。これは、どのくらいになるでしょう?下記は東京23区の新築マンション平均坪単価です。
例えば港区や渋谷区では坪単価が600万円に達しています。3.3平米で600万円ですから、単身ワンルームの標準的な広さ26平米だと4700万円くらい。都心で一般的な利回り4%で割り戻すと、月額15.6万円といったところです。単身でワンルームに住むなら、年収1000万円で十分に住めます。
家族持ちで60平米は欲しいとなったらどうなるでしょうか? 中央区、品川区あたりの坪単価400万円で考えると、24.2万円になります。家賃3分の1をはみ出すことが分かります。坪単価300万円の大田区、墨田区あたりだと18.2万円くらいになって、なんとか収まりますね。
子供が2人くらいいて、60平米では狭い、80平米は欲しいとなると、20万円で借りられるのは、坪単価247万円です。上のグラフの左側は難しく、北区、荒川区、板橋区、練馬区、などなどがターゲットになることが分かります。
というわけで、家賃3分の1ルールを守る限り、年収1000万円では単身はともかく、家族持ちの場合、山手線近辺や江南地域は難しく、北側か東側という選択肢になるわけです。
家賃20万円として残るは40万円
さて残る40万円ですが、もし車を持つと、大きくコストがかかります。上記の都心だと、駐車場代が3〜5万/月、車検代が2年ごとに30万円くらい(月に直すと1.3万)、税金が年4万円〜(月に直すと0.33万)、任意保険が5万円(月に直すと0.41万)などなど。ガソリン代や消耗品代も入れると月に5万円くらいかかる感じです。300万円くらいの大衆車でも、5年ローンの返済額は月に5万円超。合わせて月間10万円くらいの負担になります。
子供がいる場合は学費もかかります。15年間の合計で、すべて公立の場合でも540万円、すべて私立なら1770万円。月割にすると、公立3万円、私立9.8万円です。ちなみに、私立に進む場合、普通は塾代が上乗せです。これが月4〜9万円ほど。よく出来た子供で、塾なしで公立のまま大学までいってくれればいいですが、フルサポートなら最大で月に均して19万円もかかることになります。
ちなみに、ちょっとした外車、例えばBMWの3シリーズとかを買うと、ミドルレンジで600万円程度。5年ローンで月額10万円といった感じです。
都心のマンションに住んで、ちょっとした外車に乗って、子供を塾に通わせる。プチ豊かな生活の典型例であるこのセットで30万円近くかかるわけで、残り10万円では生活できませんね。
FIREに向けた貯蓄の話
ちなみに、FIREを目指す場合、例えば就職後20年でアーリーリタイアするには、6%運用を前提としても、貯蓄率35%が必要になります。
となると、月の手取り60万円から21万円を貯蓄に回すことになります。つまり残りは39万円。家賃3分の1ルールに基づくなら、住居費は13万円。残りの26万円で生活することになります。
光熱費と通信費で少なくとも2万円、食費に少なくとも3万円、交通費に1万円はかかると見ると、残りは20万円。これだと車はもちろん、子供がいるだけでカツカツの生活になるのは目に見えています。当然ながら、生命保険とか旅行とか飲み会代とかは相当厳しいですね。
年収1000万円では、十分な貯蓄をしつつ、都心で豊かに暮らすのには全くもって不十分です。
肌感覚の話
正直、生活費はかけようと思ったらいくらお金があっても足りません。それでも、家賃さえ抑えられれば、それなりに自由になるお金は生まれます。ぼくは貯蓄率30%超をしばらく継続していましたが、これはそれなりに家賃を抑えていたからできたことでした。
肌感覚でいうと、手取りが月に100万円までいけば、それなりに買いたいものを買って暮らせる感じがあります。クレジットカード払いが月間30万円くらいならまぁOK。60万円とかいくと、使いすぎたな……と思う感じです。
手取り100万円というのは年収で2000万円くらいなわけで、サラリーマンが豊かにくらせるなぁと感じるには、少なくともこのくらいは必要なんじゃないかというのが実感です。それでも、もちろん、港区とかに住んで家賃が30万とか50万とかだともっともっと必要ですし、頻繁に旅行に行きたいと思ったらそれこそお金は青天井で必要ですけど。
ちなみに年収2000万円は一人で実現しようとすると、大きく出世するか、専門職につくか、起業して成功するかといった感じになりますが、夫婦で合計2000万円なら比較的達成しやすいです。
税金対策
年収が1000万円を超えてくると、とにかく気になるのが税金です。中でも特に所得税ですね。下記は、1000万、1500万、2000万円のときの控除される金額の内訳です。
とにかく所得税の伸びが半端ありません。年収2000万円だと実に378万円も所得税で持っていかれます。不動産投資のいいところは、給与と合算の総合課税のために、取得した年は大きく課税所得を減らせるところです。この所得税を減らせるわけですから、収入の高い人が不動産に目を向けるのはよく分かります。
逆にいうと、年収1000万円を超えないと、そこまで所得税は高くありません。税金対策という意味では、それほど効果がないわけです。
サラリーマンにとって、年収1000万円は一つの憧れです。ただし、1000万円では都心で豊かな生活を送るには程遠く、そこからさらに給料が上がっても、今度は所得税がすごい勢いで増えていきます。
生活レベルを上げすぎないこと。そしてサラリーマン以外の収入の道を模索すること。FIREに至るための資産を作るには、そうしたことが重要だと、いろいろと計算して改めて感じました。