FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

ノンリコースローンの不動産投資のメリット、デメリット

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不動産融資の手法の一つに、「ノンリコースローン」というものがあります。これは、融資を受けた不動産以外に返済義務がないというローンになります。普通は不動産経営に失敗すると、自分の資産から持ち出しで借りたローンを返済しなくてはならないのですが、ノンリコースローンの場合、不動産を差し出せばチャラになるというものです。

例えば、不動産を対象とした場合、返済の原資は対象となる不動産の産み出すキャッシュフローのみを返済原資に限定する。銀行などの貸し手も、借り手に対し、対象の不動産以外の財産をもって返済することを要求できず、不動産運用終了後の不動産売却額が返済金額を下回っていても、それ以上は借り手に請求できない。

ノンリコースローン - Wikipedia

ノンリコースローンの不動産の説明を聞いてきた

日本ではめずらしいノンリコースローンですが、これを扱った投資用マンションの物件があるということで、話を聞いてきました。

 

こちら、首都圏の新築軽量鉄骨のマンションで、話を聞いたのは7戸✕4階建ての大型物件。価格は2億円を超えます。このうち、土地と物件価格の85%をノンリコースローンで融資が出るというものでした。自己資金は15%+諸経費になります。

 

ただし新築ということもあり、それほど有利な物件ではありません。表面利回りは7.4%。ざっと計算すると、5年後の税引前IRRは8.9%、税引後で5.2%です。

 

そしてノンリコースローンだけに、金利は2.5%(5年固定)の35年。ん? 安い金利とは思いませんが、そこまでバカ高ではないですね。鉄骨の耐用年数34年を越える返済期間というのも悪くないです。軽量鉄骨ですが、1F部分だけ鉄の厚みを増やすことで34年にしているそうです。

ノンリコースローンならではのいろいろな条件が

しかし話をいろいろ聞いてみると、さまざまな条件がありました。まず、販売会社が提供するサブリース契約(10%)が必須です。また、火災保険なども金融機関指定のものが必須となります。火災10年、地震5年で計100万超です。賃料の3%を、将来の修繕積立金として別口座に強制的に積み立てる必要もあります。

 

法人での投資も可能ですが、その場合、新設法人か他になんの事業もやっていない法人でないとダメということで、太陽光発電の法人は使えません*1

 

契約締結時に金融機関に払う保証手数料も、通常は10万円くらいのようですが、こちらは融資額の2%。400万円を超える値段になっています。

 

そして当初5年間は、ローン解約時に非常に高額な手数料がかかります。譲渡税が安くなる5年を越えたら、ほぼノーコストで解約はできるようですが、実質的に5年間は持ち続けるという仕組みです。

いったいどんなときにノンリコース?

気になるのは、どんなときにノンリコースとなるかです。つまり、不動産を差し入れることで融資をチャラにできるのはどんなときかですね。こちら、実は借主側の都合ではまったくノンリコースにならないんだそうです。

 

唯一、ノンリコースとなるのは、家賃収入(こちらは保証)からサブリース費用(10%)を除き、修繕積立費用を引いた額が、3ヶ月間マイナスになったときです。つまり、賃貸経営として破綻している状況だと、物件は召し上げられ、ローン残債もチャラとなるわけです。

 

正直、この物件は新築であり、サブリース付きということで周辺相場に比べてもけっこう家賃を抑えたものになっています。それでも35年と期間が長いため、初年度からちゃんとキャッシュフローが出るようになっていて、これがマイナスになるという状況は、自殺者が出たとか火災で全焼してしまったとか、そういうことくらいしか思いつきません。

 

ちなみに火災で全焼した場合はというと、火災保険から建物代は全額出るようですが、「ノンリコースは多分適用にならない」という話でした。ふーむ。

ポイントは5年後の出口戦略

ちょっと気になるリスクはいくつかありますが、少なくとも、当初5年は下手の打ちようがないくらいガチガチです。サブリース前提でキャッシュフローも出るので、まぁ5年は間違いなく想定通りのリターンを生むのでしょう。

 

問題は5年後以降の出口です。

 

新築ですから5年後に売るときは中古です。新築プレミアムで入居していた人も、築5年となると家賃が下がるでしょう。そしていくらで売却できるのか。中古の物件の場合、どのくらいの利回りが出るのかで買い手は考えます。この物件近辺の場合、相場は利回り7.5%程度です。割り戻して売却価格を見ると……*2

 

あらら。これまでに得たキャッシュフローを足し上げても、赤字です。これは厳しい。

 

最初の5年は計画どおりにいくが、残った物件はすぐに売るのは難しい状況ということですね。ブレークイーブンポイントを越えた額で売れるには、少なくとも10年の保有が必要だというのが、ざっくりとした試算でした。ちなみに10年持つと、税引前IRRで10.1%、税引後で6.8%とダメダメではないところまできます。

ノンリコースローンの最大のメリットはなにか?

いったいノンリコースローンのメリットってなんだ? と思ったのですが、ここで、「属性ではなく物件に対して融資する」という基本的な考え方がポイントだということに気づきました。

 

つまり、属性が悪くても買える。これがノンリコースローンのメリットだということです。年収が低い、職業が安定していない、すでに多くの融資を受けていて与信枠がない。こんな場合でも、頭金となる15%の現金さえ用意できれば買えてしまうということです。

 

なるほど、直近の不動産融資の渋さを考えると、欲しいのに融資が引けなくて買えないという人もたくさんいます。そういう人にとっては、キャシュさえあれば85%の融資が引けるこのローンはなかなか面白いものになるのでしょう。

 

なかなか不動産の世界は面白いものです。

 

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*1:とはえ一回ローンを組んでしまえば、他の事業もOKということらしいです。いやはや役所的

*2:年間家賃収入が150万円の場合、投資家が表面7.5%の利回りを期待するならば、150万/0.075で2億円ということになります。

太陽光発電融資で政策金融公庫に申し込みしてきた流れ

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やっと太陽光発電所の1号基が建設の目処がたちました。現在、信販会社で金利2.15%のローンを前提に進めていましたが、誰でも一つはいけると言われる政策金融公庫に、融資の申込みに行ってきました。その流れをまとめておきます。

申し込みには経産省認定書と東電書類が必要 

なんにも決まっていないところから審査が完了してしまう信販系(ジャックス、アプラス)とは違い、公庫の場合、書類の嵐から始まります。まず、申込みには経産省の認定書と東電の接続書類が必須です。

 

つまり、ほぼ工事がスタートできる状況に近づいてから、審査を申し込むということになります。18年の11月に初めて行ったときに、「書類がそろってからまた来てね」と言われたものでした。

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申し込みから融資までの流れ 

流れをざっとまとめると、次のようになります。

  1. 公庫の窓口に相談に行くと必要書類について教えてもらえる
  2. 必要書類を揃えて、窓口に持参する
  3. (1週間から2週間後)書類の確認が終わり、面談の日程調整連絡が入る
  4. 面談の実施
  5. (約1ヶ月後)審査結果が出て、OKなら融資が決定する
  6. (土地を担保に入れるなら)担保設定を司法書士に依頼する
  7. (数日後)融資額が振り込まれる

つまりは最短でも窓口に行ってから1ヶ月半はかかるという感じのようです。

どんな書類を求められるのか?

書類については、本当に多種多様さまざまなものが必要になります。しかもすべて原本が基本。持っていったら、その場でコピーを取って返してくれたりもしますが、とにかく原本を揃える必要があります。そしてやりとりは、手渡しか郵送かFAX。なぜかメールは使えなんだそうです。いただいた名刺にも、そういえばメールアドレスがありませんでした。

 

まず今回、申し込み(2)に必要となった書類は下記の通りです。これは僕の場合なので、他の人の場合は違うかもしれません。

  • 創業計画書 所定のフォーマットあり
  • 借り入れ申込書 所定のフォーマットあり
  • 登記簿謄本 原本必須。法務局に行くか郵送でゲット
  • 決算書1期分 ※僕の場合、すでに法人を設立済みで一期目が終わっているので
  • 経産省認定書
  • EPC業者の見積書
  • 物件概要所(EPC業者のものでOK)
  • 担保となる土地の公図、全部事項証明書
  • 追加で試算表 決算から6カ月が過ぎている場合、半期分のP/L試算表が必要です。税理士に頼めば作ってくれます

担保のあるなしで金利が変わる

公庫の場合、担保のある/なしで金利が変わります。下記の「基準金利」が現在の太陽光発電への融資利率ですが、担保なしが2.15〜2.45%、担保ありが1.21〜2.10%となっています。0.3ポイント以上も違うわけで、それは担保をいれたほうがいいですね。

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金利情報|国民生活事業(主要利率一覧表)|日本政策金融公庫

担保に入れるのは発電所の土地になります。まぁ二束三文の土地なのですが、あれば担保として見てくれるようです。ただし担保価値によって利率が変わり、よほど価値のある土地以外だと最も高い金利となるようです。

 

土地の担保設定には司法書士による手続きが必要なのですが、地主からの名義変更と担保設定を同時に行えば安くつくと教えていただきました。ただし、審査がOKになってからでないと担保設定ができないので、審査に通る→地主に名義変更を依頼→同時に担保設定→数日後、融資実行という流れになります。

 

また太陽光の場合、パネルについても動産担保として追加担保に入れるんだそうです。

返済引き落としはネット銀行不可!

もう一つの落とし穴は、なんと返済の引き落とし先はネット銀行が全滅です。うーん。これはひどい。

 

というのも、特に新設法人ではネット銀行の口座は比較的容易に作れても、メガバンクなどはなかなか難しいからです。公庫の担当者もそれは知っていて、「作りやすいのでみなさんネット銀行の口座をお持ちなんですが、それではダメなんですよ」と。さすが政府100%出資です。ユーザーの利便性とはかけ離れたサービス基準です。

 

幸いにして、僕の場合三井住友銀行の口座を開けているので、こちらを使う予定です。それにしても、使い勝手の点でネット銀行のほうが絶対便利なんですが。

面談の際にはさらに追加書類

さて、面談の際にはさらに追加の書類を求められます。今回の場合、下記の書類を用意するよう求められました。

  • 法人預金通帳(最近6カ月以上)
  • 事業税領収書 ※e-taxだと出ないのですが……
  • 公共料金の領収書
  • 法人借入のある場合、支払明細
  • 代表者個人の借入がある場合、支払明細
  • 担保に予定されている物件の資料
  • 自宅の不動産賃貸借契約書および家賃の支払い状況が分かるもの
  • 発電所にかかわる見積書(東電、草刈り、周辺の発電状況など)
  • 運転免許証など身分証明書
  • 代表社個人の預金通帳、有価証券等の明細(最近6カ月以上)
  • 源泉徴収書または確定申告書
  • 発電設備の保証関係、土地地主の年代、EPC業者アフターフォロー体制、追加機器の必要の有無

いやはや。書類集めと情報収集だけでもやっかいです。これは、公庫融資コンサルの事業が成り立つのも分かります。面談が完了したら、どんな状況だったのかまた書きたいと思います。

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太陽光の「先端設備導入計画」木更津にて一基完了

太陽光には税制優遇措置がいくつかありますが、その1つ「先端設備等導入計画」による、「生産性向上の特措法」が、一基分完了しました。

未稼働案件で、最初の3年の償却資産税がゼロに

こちらは、未稼働の太陽光発電設備に対して、償却資産税がゼロになるという優遇策です。1500万円のパネル&パワコンという資産は、簿価の1.4%の税金が毎年発生します。これが3年間ゼロになるので、合計で50万円程度の税を削減できます。

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申請はけっこうやっかい

ぼくの場合、税理士が成功報酬型で申請をやってくれるということで依頼しましたが、それでも書類集めはそこそこ面倒でした。

  • 発電事業計画書
  • EPC業者作成の計算明細(発電予想量、売電単価など)
  • 設備認定通知書
  • 保守関係の契約書、見積書
  • 土地売買契約書
  • 連携負担金証明書類(東電)

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これを税理士に送った上で、作成された書類に印を押して、該当の市区町村へ提出です。あとはおまかせなので、まぁ楽といえば楽ですが、こうした書類を用意するためのコスト、それを審査するためのコストって、補助金額の半分以上に達してるんじゃないか? という気もします。

市区町村は太陽光への税制優遇措置を厳しくしてる

こうして先端設備導入による生産性向上特措法の申請を進めていましたが、各市町村は太陽子発電を除外することが増えているようです。

 

ところが、市町村が公表している「導入促進基本計画」(市町村が作成し国の同意を得たもの)では除外していないが、Webでは除外と書いている市町村もあれば、計画およびWebの双方で除外していないが、申請してみると除外しているとして不認定になる市町村もあります。こういう情報提供の不徹底さが、お互いの大きなコスト負担になっているわけですね。

 

筑西市については、申請も済んでうまくいくかな? と思っていたら、市から速達の書類が。「市内の事務所の所在を確認できる書類を送れ」と。いやいや、そんな話は初耳です。市内に物理的な事務所がないと申請除外だということのようです。そんなわけで、最後の段階で申請取り下げを行うことになりました。

税理士に成功報酬を払って木更津完了

そんな中、認定までこぎ着けたのが木更津市。工事日程もそろそろ決まり、年末から年始にかけて稼働を見込んでいます。

 

税理士に成功報酬費用を振り込んで、この案件も完了です。しかし、報酬は前払いで、その効果は稼働後の3年間の税金の減少ですから、時差が発生するものですね。

 

久しぶりに太陽光の話題でした。

収益不動産の価格はピークを打ったか?

収益不動産への関心をずっと持ち続けているのですが、こと相場の状況でいうと、やっと価格がピークを打って低下が始まったかな? という感じのようです。利回りでいうと、上昇が始まったかもというところ。

区分マンションは利回り低下継続

まず区分マンションですが、利回りの低下は落ち着いてきたようですが、上向いてはきていません。リーマンショック直後の2010年からの健美家のデータです。2010年当時は、区分の利回りが12%もあったんですね。価格も当時から約2倍になっています。

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一都三県を抜き出すとこんな感じです。序列でいうと、東京23区→川崎市→横浜市→埼玉主要→東京市部→千葉主要という感じで、見事に層になっています。10年前は東京23区でも9%を超える利回りでした。

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一棟アパートは価格のピークを超えたか

一方で、一棟アパートは2013年1-3月に価格がピークをつけ、徐々に下がってきているようです。利回りも復活の兆しが見えます。

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一都三県で見ても、埼玉主要部や横浜市、そして東京23区で利回り上昇の兆しが出てきています。しかし、2012年など東京23区よりも川崎市のほうが利回りが低かった時代もあるんですね。

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一棟マンションもアパートと似た傾向

一棟マンションもアパートとよく似た傾向です。一足早い2017年10−12月にピークをつけたようで、価格下落も早く、現在は2015年あたりの価格まで戻ってきています。

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一都三県で見ると、23区以外での利回りが、2018年に入ってから上昇しているのが分かります。ただし、23区はまだ戻りが渋い状況ですね。

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実需不動産は下がっていないが、収益不動産はピークを打った

住宅ローンなどの金利は引き続き低く、過去最低を更新中という状況です。一方で、スルガ銀行に端を発する、地銀の貸し出しバブルは弾けました。属性に関わらずフルローンが出たのも今は昔。現在は、普通に頭金を2〜3割入れてほしいと言われます。

 

つまり借りにくくなってきているわけで、これが収益不動産価格の下落を招いているのでしょう。価格が下がることで、利回りは上昇しています。

 

こうやって振り返ってみると、この10年は早くに不動産を買った人の勝ちだったことがよく分かります。利回りも高く、物件価格も2倍になっているのですから。ただし、普通のサラリーマンでも融資が簡単に引けるようになったのはこの5年ほどですから、10年前は買いたくても買えないというのも事実でしょう。

 

不動産投資では、物件価格や利回りもあるが、借りられるかが最も重要だとよく聞きます。たくさん借りてレバレッジを効かせることで、もし低利回りだとしてもIRRは大きくなるわけです。

 

低金利はまだまだ継続するという見方が一般的ですが、価格はどう動くか。不動産投資は面白そうなので、ぜひトライしたいのですが、ほんと、5年前に買っておけばよかったという感じです。

 

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固定資産税の支払いを忘れて督促が来ました

 太陽光発電所の敷地として購入した土地。その固定資産税の支払を忘れていました。1回目は、下記の記事のように支払いを済ませたのですが、2回めは自分で覚えていてはらう必要がありますね。当たり前ですが。

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地域によって違う支払い時期 

今回、改めて確認してみると固定資産税は年間4回に分けて払いますが、地域によってそのタイミングは異なるようです。例えば東京23区だと、それぞれの締め切りは1期が6月30日、2期が10月2日、3期が12月27日、4期が2月28日。

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ところが、この土地の場合、スケジュールはこうなっています。

  • 1期 5月7日 支払済
  • 2期 7月31日 督促を受けた!
  • 3期 9月30日 これから
  • 4期 12月25日 これから

うーん。場所によって違うとはややこしい。ちなみに督促料として100円が上乗せされていました。この督促料は、租税公課として費用に入るものなのか、たぶん入ると思うのですが、今度税理士に聞いてみます。

支払いはnanacoで

今回の税金も、Androidに入れたモバイルnanacoで払いました。リクルートカードでチャージすることで、1.2%還元を受けつつ、支払うことができます。

 

ちなみに、今ひとつマイナーなファミペイでも、実は税金を支払うことができます。いまのところ、別途の手数料を取られずに税金などの支払いをできる電子マネーは、nanacoとファミペイの2択ですね。

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nanacoにリクルートカードでポイントを得つつチャージできるのは月間3万円までなので、今月もチャージをしておきました。

 

4000万円あれば家賃13万円の家に住める

持ち家か賃貸かの論争は尽きることがありませんが、投資家目線でもう一度考えてみたいと思います。

 

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4000万円を投資したらいくらの収入になるか?

ここに4000万円あったとします。これを投資に回すとしましょう。期待利回りは5%です。すると、年間で200万円の利益が出ます。2割の税金を引いても160万円ですね。月額に直すと13万3000円です。

 

つまり4000万円を投資して、その配当で家に住むなら13万円の家に住めるというわけです。東京南西部で見ると、築10年以内でも13万円だせば50〜60平米のマンションに住めることがわかります。

4000万円出すとどんな家が?

では4000万円ではどんな家が買えるかというと、やはり築10年くらいだと50〜60平米くらいのマンションになります。よく探せば、もう少し広かったり新しいものもありますが、多少お得といった程度です。

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※HOMESのサイトで、3500〜4000万円、築10年以内のファミリータイプ中古マンションを検索したところ 

 

そして購入時にはざっくり1割程度の諸費用がかかります。そして購入した場合は、管理費が1万円〜、修繕積立金が1万円〜、そして固定資産税が年間10万〜 かかってきます。20年住むとしたら、諸費用400万+管理費360万+修繕積立金360万+固定資産税300万といったところでしょうか。締めて1420万円にも上ります。

 

ここにさらに住宅ローンの金利がかかってきます。税金優遇もいろいろとありますが、差し引きプラスとはなかなかならないでしょう。

賃貸なら4000万円は残る。持ち家なら4000万円の不動産が残る

20年後、どうなっているかというと、賃貸なら4000万円の元金が残ります。持ち家なら4000万円で買った不動産が残ります。

 

もちろん、5%運用というのはそれなりにリスクがありますから、4000万円が毀損しているかもしれません。持ち家の場合は20年後に4000万円より値下がりしているリスクもあります。というより、4000万+1420万円の5420万円に価値が上がっていないと、実質的に損失です。

賃貸のほうがグレードが落ちる?

いやいや、4000万円の持ち家物件と13万円の賃貸物件はそもそもモノが違う、という考え方もあります。賃貸物件は、持ち家ほど豪華ではなく、収益優先ですから安普請の場合も多いのです。逆に、立地や広さが重要で、設備などをそれほど気にしなければ賃貸でもいいということになります。

 

ちなみに礼金や更新費用のないURの物件を見ると、13万5200円で46平米ですが、大田区で自動お湯張り、防犯カメラ、インターネットなどけっっこうちゃんとした設備になっていることがわかります。

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世田谷区の物件では78平米で14万5600円となっており、比較的4000万円の物件に近いイメージですね。

利回り5%の投資なんてあるのか? 

投資をしたことのない人の場合、5%の利回りなんて想像がつかない人もいると思います。しかし下記でもまとめたように、一定のリスクを取れば5%くらいの投資先はけっこうあるものです。

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もちろん、もっとリスクを取ってよければソーシャルレンディングやARCCなど、10%に迫る投資先はいまでもいろいろとあります。

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幅広い債券に分散投資するバンガードのETF BNDなら、現在ちょうど3%程度の利回りが出ます。4000万円ではなく約6500万円が必要になりますが、それでも安定して13万円の家賃なら払える計算です。

 

 

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初の消費税還付が来た その仕組みとは

先日、法人の初決算が終わりました。赤字決算だったので法人税の支払いはなく、住民税の均等割だけ納付したところです。すると、さっそく昨期の消費税還付が税務署から振り込まれていました。額は少しではありますが、うれしいことです。

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消費税は売上と費用の差額を払う

さてこの消費税還付とは何なのか。改めて確認しておきたいと思います。

 

まず消費税は別名付加価値税と呼ばれます。売上高から原価を引いた残り、それが付加価値です。付加価値の8%を消費税として納めることになります。P/Lを図解すると、この付加価値は、さらに従業員の取り分である人件費と、株主の取り分である純資産増加額と、税金である法人税に分割されます。

 

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単純に売上の8%を消費税として収めてしまうと、企業が企業から仕入れて販売した場合に、各企業がそれぞれ8%を納めることになり、税支払いが重複してしまいます。そのため、仕入れた分は差し引いて、「付加価値」だけに税金をかける形です。

 

消費税を入れ込んでもう少し図解するとこうなります。

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売上の8%に当たる消費税が、預かったものです。このうち原価にかかる消費税は、仕入れのときに支払っています。残りの付加価値にかかる消費税を実際に納めることになります。

付加価値がマイナスだとどうなるか?

では売上よりも原価が大きく、付加価値がマイナスのときはどうなるでしょうか? 数式的にいうと、付加価値の8%を納めるのですから、納めるのは−8%、つまり8%戻ってくることになります。これが消費税還付です。

 

図解するとこうなります。

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消費税還付の条件

ただし消費税還付を受けるには、条件があります。それは課税事業者でなければならないということです。

 

法人は売上高が1000万円以内の場合、免税事業者となります。これは売上についてくる預かった消費税はそのままもらい、付加価値につく消費税は収めなくていいという制度です。これによる利益を、益税ともいいます。

 

中小法人の場合、売上高が8%嵩上げされるし、書類仕事は減るし、いいのですが、収めなくていいので、戻ってくる消費税があった場合もなしになります。

 

ただし、自ら「課税事業者」を選択することもでき、すると消費税納税義務が生まれます。逆にいうと還付も受けられるということです。ただし、いったん課税事業者を選択すると3年間は免税事業者に戻ることができません。

太陽光発電事業のセオリー

さて、太陽光発電事業では、初期に発電設備の購入という大きな原価が発生します。そのため、購入年度は基本的に付加価値はマイナスです。つまり、売上との差額について消費税が還付されるということです。

 

例えば売電売上が100万円、設備購入費が1500万円だったとします。売上には8%の消費税が乗って支払われるので、100万+8万円の売上です。設備にも8%乗るので、1500万+120万円のコストです。付加価値は、▲1400万円。支払うべき消費税はその8%の▲112万円となります。支払った消費税120万円から預かった消費税8万円を引いても同じです。

 

この112万円が還付される。これは大きいですね。そのため、設備購入年度から3年間は課税事業者でいるのがセオリーです。

 

4年めからは免税事業者に戻ります。継続して設備購入をしていない限り、大きな原価はかかりません。一方で、売電売上はフルで出てきます。つまり、しっかりとプラスの付加価値がうまれる状態になり、消費税の支払い義務が生じるからです。

不動産投資では消費税還付は封じられている

さて、似たようなお金の動きをするものに不動産投資があります。物件購入時に大きな支払いが発生し、そのあと長期に渡って売上が立っていきます。以前は、不動産投資でも消費税還付をうまく行う方法が節税策として話題でした。でも、現在はほぼ封じられています。

 

それは、「消費税の還付額は売上に占める課税売上の割合に応じて決まる」からです。太陽光の場合、売上の全額が課税売上なので問題ありません。ところが、不動産の家賃収入は消費税が発生しない売上なんですね。賃貸住宅に住んでいると分かるのですが、家賃に消費税はつきません。

 

この抜け道を探そうといろいろな手段が編み出されました。例えば、不動産を購入した年度には家賃収入を発生させず、物件に自動販売機を設置してそこから課税売上を上げることで課税売上比率を100%にし、還付を受けるという手法です。また、金の売買には消費税がかかることに着目して、大量の金取引を行って課税売上比率を上げるという方法も聞いたことがあります。

 

ただし、こうした抜け穴はどんどん塞がれています。いたちごっこではありますが、不動産での消費税還付はけっこう難しい状況です。

 

ちなみに、PLにはコストとして計上されていても、その全額が消費税還付の対象になるわけではありません。会計上のコストと、税務上のコストは違うんですね。そんなわけで、うれしい消費税還付でした。

不動産取得税がやってきた

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太陽光発電用地として購入した土地の不動産取得税の納付用紙がきました。都道府県あての税になります。

 固定資産税の半分くらい

こちら、購入時の1回だけ支払う必要がある税で、標準課税額の3%という計算です。下記にも書いたとおり、固定資産税が1.4%なので、だいたい固定資産税の倍の額を支払う必要があります。

 

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 2021年4月から4%に引き上げ

ちょっと調べたら、通常は4%で、これが2021年3月31日までは軽減措置がなされているようです。

 

住宅は3%、宅地は2分の1の額に対して3%だそうで、実質1.5%ですね。

 

僕の土地の場合、4割弱が宅地、5割強が山林という扱いです。ただし課税標準額は、宅地部分が178万円、山林部分が3万円と大きな違いがあります。このため取得税も、宅地部分が2万6737円(1.5%)、山林部分が934円(3%)と大きな違いになりました。

 

この土地は太陽光発電で一般的な山の中という場所ではなく、街道沿いの、周りに人家のある場所なので、こうなります。

支払いはnanacoで

ちょうど3万円少々のnanacoチャージがあったので、今回はそれを使ってセブンイレブンで支払いです。

 

それにしても、固定資産税の初回支払や、自動車税の支払いタイミングである5月にこれが重なるのは痛いものです。最近ほんとうに税金ばかり払っているような気がします。

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固定資産税がやってきた 太陽光発電投資の土地

太陽光発電用に購入した土地の固定資産税の用紙がやってきました。なんかしょっちゅう税金を払っている気がしますね。

 

固定資産税は毎年1月1日時点の所有者が払うことになります。この土地はわけあって先行して売買を行った土地です。固定資産税はぼくが払うことになりますが、それ以上に値引いてもらったのでまぁよしとします。

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 固定資産税の計算方法

まず固定資産税の計算方法ですが、次のようになっています。

  • 固定資産税=課税標準額×標準税率(1.4%)

この課税標準額とは、土地の場合「路線価」に面積をかけて計算します。市区町村ごとに定めるもので、1月1日時点の価格で3年に1回見直されます。

  • 実勢価格 > 公示価格 > 路線価(相続税路線価) > 路線価(固定資産税路線価)

という関係の場合が多いようです。そして相続税路線価は公示価格の8割、固定資産税路線価は公示価格の7割程度と言われています。  

www.chikamap.jpここで調べた路線価が例えば5000円なら、広さの200平方メートルを掛けて、評価額100万円になります。その1.4%なので1万4000円が固定資産税となります。

山林の路線価は安かった

ぼくの場合、宅地部分が574平米で路線価が3077円、山林部分が958平米で路線価が32円という状況でした。合計して評価額が179万7526円、課税標準額が118万9951円(約66%)です。隣接している土地なのですが、それが宅地なのか山林なのかでずいぶんと評価が違うんですね。実に100倍です。

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ちなみに実際の購入した土地代は評価額の約2倍。350万円程度です。土地は買った瞬間に、評価額は購入代金の3分の1になることを実感しました。なるほど、これは確かに相続税を減らせるわけです。

 

税率でいうと、毎年実質0.4%の資産税がかかるということになります。金融資産は保有していても税金はかかりませんが、不動産は資産税がかかります。税率が低いのでそこまで問題ではありませんが、感覚的には土地を所有しているというより国からレンタルしているような気分です。

支払いは電子マネーでポイント獲得

さて支払わなければならない固定資産税は、1万6600円。4つの期に分かれていて、第一期(5月7日まで)に4600円、第二期(7月末)が4000円、第三期(9月末)が4000円、第四紀(12月末)が4000円です。

 

 固定資産税をインターネットを介してクレジットカードで支払える自治体も増えていますが、こちら筑西市は残念ながら用紙による支払いが中心。口座引き落としも可能なようですが、「役所に来ていただければ手続きが……」という地元民でないとどうにもできないような仕組みです。

 

結局、用紙を持ってコンビニで支払うのが最も楽なようです。そしてコンビニで支払う場合、以前に書いたnanacoを使って払ってポイントをゲットする方法が使えます。わずか1.2%の還元ですが、毎回となればそこそこの額になりますね。

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土地は売らん!野立て太陽光発電のトラブル

太陽光発電所の建設を進めていますが、さすがに物件数が多くあるといろいろとトラブルものあるものです。今回、なんと2ヶ所で「やっぱり土地は売らん!」という地主さんに遭遇しました。

やっぱり値段が安すぎた……という地主さん

1ヶ所は、街道沿いの開けた場所で日当たりもよく、理想的な場所ですね! と言っていた土地です。これはいい場所を見つけられたと喜んでいたのもつかの間、連絡が。

「地主さんが、やっぱり今の値段では売れない、と言っているんです」

「え? そうなんですか?」

「今の値段の2倍でないと売らない、と」

「……」

「もしその値段になると、全く採算が合わなくなります。これは諦めたほうがいいのでは」

「そうですね。残念」

 

わざわざ現地を見に行って、うまく決まったと思いきや、これです。しかもせっかく18円案件の土地なのに、値段を倍にしたら太陽光発電用には価値が下がってしまいます。2019年に入ってからやっぱり太陽光発電用に……と思っても、当初の価格では売れないですね。そのあたり地主さんはどう考えたのでしょう。

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ともあれ、2倍と言われてはどうにもなりません。こちらのシミュレーションでは、10%価格が上がっただけでもけっこうな収益ダメージなので、もし交渉して1.5倍になっても、投資対象からは外れてしまいます。残念。

携帯会社にアンテナ立地を貸している

もう1ヶ所は、もろもろの手続きが終わり、工事日程を決めましょうというところまで来ていた案件です。当然契約書も取り交わし、あとは工事……というタイミングで電話が。

「売却予定の土地と少し重なる形で、携帯電話の鉄塔が立っていまして。電話会社にその土地をレンタルしているみたいなんです。もともとは、そことはずれているはずだったのですが、公図を改めて確認すると一部入っているようで。調整しましょう、と地主さんとやり取りしていたら、それならもう売らん! となってしまいました」

 

ちょっとまって。この土地についてはすでに東電へ電力負担金も支払い済みです。ここまで進んできて、しかも売買契約も交わしているのにいまさらキャンセルとは!

 

「地主さんとはもう話もできない状態で……」

 

そう言われても、こちらも困ります。売買契約を結んでも、引き渡しまではキャンセルできるのが通常です。買い主は手付金を諦めることで、売り主は手付金を倍返しすることでキャンセルできるのが普通です。

 

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とはいえ、こちらも貴重な18円案件なのに加えて、電力負担金の支払いもあります。土地の仲介業者は、もう一度話をしてみますとは言っているものの。さて、どうなるか。

 

なかなかに太陽光発電所の建設はいろいろとあるものですね。

不動産投資は実は利回り4%程度 レバレッジが必須の理由

不動産への投資を検討するにあたって、シミュレーションをいろいろとしています。太陽光発電もそうですが、「表面利回り」というのはくせ者で、株式などに比べてどうしてもリターンが大きく見えてしまいます。しかし、実際の利回りはもっとぜんぜん小さいのです。

 

物件価格1億円、年間賃料収入800万円(表面利回り8%)、RC築10年もののシミュレーションを見てみましょう。空室控除や原状回復費用、客付けのAD、ビルメンテナンス費用なども一般的な値で入れています。

 

なおこちらのシミュレーションは、『Excelでできる 不動産投資「収益計算」のすべて』収録の「玉川式不動産収益試算Excelシート Rev.2016.08.31」を使いました。きっちり不動産の収支計算をしたい人には必須のツールであり書籍だと思います。

Excelでできる 不動産投資「収益計算」のすべて

Excelでできる 不動産投資「収益計算」のすべて

 

全額自己資金で購入するとIRRは4%程度

全額自己資金でまかなった場合の税匹前IRRが下記になります。

 

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物件価格の7%程度の仲介費用など初期費用がかさむので、当初のIRRは低くなります。その後、物件を持ち続けることで、IRRが上昇していく形です。しかしそれは10年めで4%程度、その後もわずか4.5%程度でしかありません。

借り入れで大きくレバレッジをかける

では金利2%で30年ローンを組んでみましょう。頭金として0%(フルローン)〜100%(全額自己資金)を入れた場合のグラフです。

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見事にレバレッジの効果が出ました。フルローン(0%)の場合は、5年めで15%、8年目には18.9%に達します。その後IRRが下がっていくのは、元本の返済が進み、実質的なレバレッジ比率が低くなっていくからです。

 

頭金10%の場合はかろうじてIRR10%を維持しますが、20%を入れるとIRRのピークは15年めあたりの8.4%で、そこからは横ばいです。

 

全額自己資金(100%)の場合、年数を経るごとにIRRが増加しました。このシミュレーションでは、40%以上入れると長くもつほどIRRが上昇する数字になりました。

 

このように、不動産投資は4%程度の利回りですが、レバレッジを効かせることで10%を超えるIRRを出すことができます。これが不動産投資の最大のメリットですね。

ただし純資産の増加は全額自己資金のほうが多い

IRRは投資効率を示す指標なので、できるだけ借り入れをして自己資金を減らしたほうがプラスになりました。ただし、純資産の増加を見ると、借り入れをしないほうが増加ペースは早まります。

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純資産とは、毎年の手残り(インカムゲイン)と売却時の利益(キャピタルゲイン)を足したものです。これが0を超えるということは、購入価格で売却しても利益が残ることを意味しています。また赤い線は購入価格の1億円ですが、ここを超えるということは、この物件の価値がゼロになっても利益が出ているということです。

 

当然ですが、自己資金比率が高いほうが、早く純資産が貯まっていきます。これはローン金利の影響ですね。

 

簡易的な計算方法

簡易的な計算方法を考えてみます。まず表面利回りが8%だとしましょう。ここからさまざまな費用が引かれていくという考え方です。まず、借入金利の2%を引きます。それから、諸経費(空室控除なども含む)が2%*1を引きます。残りは4%ですね。

 

20年ローンの場合は、総額を20年で返すので1年あたり5%の返済です。25年ローンなら4%、30年ローンなら3.3%になります。先程の残り4%から、この返済分を引きます。すると、30年ローンなら0.7%残ります。これが手残りの金額だという考え方です。

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この元本返済分と手残りが、利益の源泉です。元本返済分は借入額が減少するのでその分キャピタルゲインが増加したことになります。手残りはインカムゲインの増加です。このざっくり計算で、投資家のものになる利回りはざっくり4%なのが分かります。

 

元本返済額は、返済年数が長くなるほど小さくなるので、その分が手残りに変わります。逆にいうと、返済年数を長くしても、手残りが増える効果だけで、純資産の増加には寄与しないことになります。

 

また、税金の影響もあります。元本返済分は税金に影響を与えないのでここをカットし、代わりに減価償却費がコストとして入れ込めます。イメージとしては下記になります。

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償却費を除いた残りが課税所得になります。その約30%が税金で持っていかれますので、税引き後のCFに影響を与えます。償却年数が短いほど減価償却費が多く取れるので、その分課税所得が減り、税金が減少します。古い物件ほど償却年数が少なくなるので税金が減る、RCより鉄骨、鉄骨より木造のほうが償却年数が少ないので税金が減るということです。

 

ただし償却年数が短い物件は、一般にローン年数も短くなるので、良し悪しです。

 

さらにここで「税金が減る」と書きましたが、これは毎年の税金の話です。落とし穴なのですが、ここで減った分の税金は、物件を売却してキャピタルゲインを得た際に払うことになります。つまり、インカムゲインとキャピタルゲインの税率が同一ならば、単に税払を先送りしているだけということです。

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この図のように、減価償却した分が物件売却時のキャピタルゲインになるので、その税務上の利益には税金がかかります。つまり、キャピタルゲイン+インカムゲインの合計に対して、タイミングは違いますがどちらにせよ税金がかかることになります。

 

なお、減価償却分と元本返済分のどちらが多くなるかは状況によって異なるでしょう。償却年数よりもローン年数が長ければ、減価償却のほうが早く進みます。上の図は逆にローン年数のほうが短い場合です。ただし、元利均等返済の場合、初期は金利払いが中心で元本返済が進まないので元本返済のペースは最初ゆっくりで、あとから早くなる感じです。

 

この方法だと、シミュレーションよりも保守的に計算が可能です。そして簡易に計算できるので、大外れがないともいえます。

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 【不動産関連ネタです】

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*1:家賃収入の25%程度かかるのがRC物件の標準のようです

大家の会に参加してみた 営業臭なし

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不動産投資をするなら、メンタルの意味でもノウハウの意味でも仲間が必要――ということで、初めて大家の会に行ってみました。ネットで見つけて、翌日参加だったのでけっこうドキドキしたのですが、懸念したような営業臭もなく、費用もランチ付きでリーゾナブル。運営もボランティアベースで、これはいい集まりだなぁと感じました。

 

ほかの投資家の会もそうなのですが、同じ趣味?仕事?を持つ仲間と話ができる機会というのは少ないものです。しかもお金が絡む話だと、「あいつなんかたくさん資産をもっているらしいぞ」とやっかみを受けるかもしれません。多くのサラリーマン大家さんは、自分の資産額や不動産収入は職場では秘密にしている(投資自体も秘密)というのもよくわかります。

 

匿名で「◯◯県にRC一棟ものを持っています」と話ができる場

集まっていた40名近くの方々はほとんどが大家さん。区分メインの方もいれば戸建てメインの方も、地方の方も、一棟ものの方もいました。それぞれみなさん戦略は違うのですが、口々にいうのはやはり「融資」。

 

2017年あたりをピークに、2019年現在はかなり融資の審査が厳しくなっており、よほど属性の良い人か、現金を大量に持っている人でないと融資がひけないようです。そのため、新しい物件を取得するのではなく、手持ちの物件に手を入れてバリューアップをするタイミングだと、何人かは話していました。

 

融資が厳しくなると買える人が少なくなるので、需要と供給の関係でいうと買い手有利です。自然と価格が下がり、利回りもアップするはずですが、まだ物件価格は落ちていないというのがみなさんの感触です。「売買ではなくバリューアップの時期」というとおり、買い手も少ないが売り物件も絞られてくる時期なのでしょうか。

 

そういう意味では、今年後半から来年にかけて物件価格が下がっていくのか、それとも高値が継続するのか、こればっかりは誰も分からないところです。

 

そして、では2016年あたりの融資がかなり緩かったタイミングに購入していたらどうだったのか? という話もありました。当然、当時から比べると物件価格は下がってはいるのですが、物件価格の下落スピードよりも、借り入れの返済スピードのほうが早いんですね。つまり、キャピタルゲインでも損はしていないと。

 

なるほど、不動産投資では、少しでも早く購入することが有利になるんだな、と実感した感じです。僕の場合、セミリタイアしたので現在の属性で融資を受けられるのは今年が最後です。来年以降はどんどん属性が悪くなってしまいます。やはり今のうちに物件を買うべきなんだろうな、と悩む感じです。

2019年度の太陽光FITが14円で決定

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経済産業省が2019年度以降のFIT制度買取価格を発表しました。買い取り価格は2018年の18円から22%下がって14円。これは、当初の想定どおりです。ただし、入札対象基準は500kW以上となりました。50kW以下を低圧、50kW以上を高圧といいますが、高圧は入札を免れた形です。

www.meti.go.jp

 

ちなみに住宅用の10kW未満の太陽光発電はスタートから10年がたち、最初期のFIT案件が買い取り期間終了を迎えるのが2019年です。一巡した感じですね。

 

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キャッシュフローが出ない土地値以下不動産を考える

不動産の物件を探している中で、面白いものに出会いました。土地の値段以下、それどころか積算価格以下の値付けがされている一棟アパートです。場所も都内で悪くなく、ブランド価値のある立地です。ただし、利回りが4%以下と悪く、20年ローンだと税前キャッシュフロー(CF)がほぼゼロになります。利益は黒字なので税金は取られ、税引き後CFはマイナスです。

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※写真はその物件ではありません

さらに、昨今の融資引き締めを受けて、20%程度の自己資金を入れる必要があります。となると、初期に必要な現金が大きい上に、持っていると毎月お金が減っていくという恐ろしい案件です。

 

それでも面白いのは、土地として売れば即座に買値の1.3倍くらいの値が付きそうなところ。ではなぜすぐに建物を潰して売らないかというと、大元のオーナーが住居人として借りて住んでおり、契約上、立ち退かせられないからのようなのです。ただしこの方はかなりの高齢で、5年から遅くとも15年後には施設などに移らざるを得ない。

 

つまり、どんどん現金が減っていく中、元オーナーさんが引っ越してくれれば売却して資金を回収できるという投資になります。完全なキャピタルゲイン投資ですね。地上げみたいなものです。

純資産額のシミュレーション

まずは純資産額の年別シミュレーションです。平均居住年数を3年、募集にかかる平均月数を1.7ヶ月、平均募集費用を2ヶ月、平均原状回復費用を2ヶ月として、試算しました。メンテナンス費なども入れて、経費率は27%です。自己資金は2割入れて1.3%の20年ローンとしてみました。固都税や売買時の諸経費、所得税なども入れた税引き後の純資産額推移が下記になります。

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青棒が個人での購入、赤棒が法人での購入です。売却金額は積算評価額としました。なんと法人購入なら初年度からプラスです。これはすごい。仮に買値での売却だとしても、4年めからは純資産額がプラスになります。

 

もちろん毎年借入金の返済が進むため、期が進むごとに得られる純資産額はプラスとなっていきます。ここだけ見るとかなり美味しい投資です。

 

ではそのために必要なキャッシュはどうでしょうか? 

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赤線と青線が年次キャッシュフロー、棒が累積CFです。初期費用はもちろん、毎年の税引き後キャッシュフローは赤字(税前でトントン)なので、毎年どんどんお金が流出していきます。7年後には初期投資額の倍まで現金が必要になっていきます。

 

手元の資金が尽きるか、売却できるかのチキンレースです。もちろん、手元キャッシュがきつくなったら、借り換えなどでローンを組み直すこともできますが、構造的にはこうなります。

マルチプルを考える

キャッシュはどんどん出ていく、しかし借入金返済も進むので、年月が経つにつれて売却時の利益も大きくなる。そんな構造です。では、積算価格で売却できた場合、初期費用に対して何倍のリターンを得られるのかを見てみましょう。いわゆるマルチプルです。

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 なんと初年度から1.14倍で、年を追うごとに増加していきます。10年めで2.3倍、15年で3倍を超えてきます。ただしこれは、「その年に売却できた場合」だということに注意が必要です。また、10年めで2.3倍ということは、ざっくり暗算しても年率7%程度ということでもあります。

IRRで考えてみる

となると、もう一つ考えておくべきはIRRです。IRRとは以前書いたように、同額を複利の定期預金に預けた場合に得られるリターンと比較できる、利回りの指標ですね。

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なるほど、積算価格での売却であればだいたい5%くらいを維持できそうです。ただし5〜6年後くらいをピークにだんだんIRRは低下します。買値での売却では、徐々にIRRが上昇し、3%くらいになるようです。

 

実はIRRで見た場合、それほど利回りのよい投資でもないことが分かりました。売値は正直不確実ですから、5%前後の定期預金と同様の見通しです。

自己資金比率と借り入れ金利がIRRに及ぼす影響

さらに、この投資では自己資金割合と借り入れ利率が大きく影響を及ぼしそうです。そのため、投資効率が最も良さそうな6年めに売却したとして、自己資金比率と借り入れ利率を変化させてIRRをチェックしてみました。

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なるほど、このグラフを見ると、最も利回り(IRR)に影響するのは金利というより自己資金比率のようです。自己資金比率が14%ならば、7〜8%のIRRリターンが期待できますが、自己資金比率が20%を超えると6%がいいところです。

そもそも自己資金をどう捻出するか

投資としては面白い案件なのですが、下手をすると何年も資金を回収できず凍結する形になります。そして年がすぎるほどに利回りが悪化する恐れがあります。何より問題なのは、そのためにどんどん必要資金が増えていくことです。

 

現在の資産状況では、初期の自己資金を用意することはなんとかできそうですが、その後の追加必要CFを賄うには、継続的に株式などを売却していかなくてはなりません。そして、今は株式を売るにはあまりいいタイミングではないと思うんですね。

 

想定リターン(IRR)が15%くらいあれば魅力的なのですが、そのためにはいくらで売却する必要があるのでしょう? 計算すると、「近隣成約土地値」で売却できると、6年めのIRRがちょうど15%となりました。ただし、これは建物解体費用は含んでいません。

 

そしてこのIRRは年数を経るごとにどんどん低下し、11年めには10%を切り、22年めには5%台に落ち込みます。

 

22年売却できずにいたら、その資金は素直に株式で運用していたほうがお得だったということになりかねません。なるほど、一見お得に見える物件でも、この値段(積算評価以下)で売りに出ているのはそれなりの理由があってなんですね。

 

正直、ちょっとこの物件は難しいなと思いました。価格がこの4分の1くらいなら、チャレンジしてもいいのですが、総額が高すぎです。借入金額が資産総額を軽く超えています。マイナスCFが積み上がっていくことを考えると、更地にして売却できるようになるまで頑張れる自信がありません。逆に、資金が大量にある人は、こういう物件で着実に資産を増やせるんだなと思った次第です。

 

2019年の太陽光発電投資について各社に聞いてみた

現在、東京ビッグサイトで「資産運用EXPO」が開催されています。太陽光発電EPC業者も多数出展していたので、各社のブースで2019年の太陽光発電事業について、見通しを聞いてみました。

 

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FIT14円にどう対応する?

いま新規の太陽光発電案件を探している人が一番気にするのは、2019年のFIT14円にどう対応するか? でしょう。

 

ほとんどの事業者では、「利回り10%を確保するよう努力する」という方針でした。FITの低下で売上が22%下落することが確定するわけですから、利回りを維持するということは、コストを削減したり利益を削ったりするということです。

 

「利回りが10%を下回ると、最初の10年利益がでなくなったりして投資案件としての価値がなくなる」

「利回り10%以下だとそもそも融資がおりない」

「太陽光パネル自体の価格も下がってきている。パネルメーカーも、これを機にさらに価格を下げてくる(これまでは高くても売れていた)」 

過積載に関する考え方は?

最近の低圧発電所では、49.5kWの低圧ギリギリのパワーコンディショナーに、1.5倍から2倍程度、80Kwから100Kwの出力を持つパネルを組み合わせる、いわゆる過積載が普通です。過積載はピーク時の発電出力を捨てることになりますが、逆に朝晩など発電量が少ないときでもパワーコンディショナーの上限に近い電力を売電できるところにメリットがあります。

 

「日陰ができるなど、環境によっては過積載のメリットは大きい」

「パネル自体の出力も上がってきているので、土地が狭い(通常100kWクラスだと300坪くらい必要)物件でも過積載できる可能性がある」

「当社では、80kWを標準的な過積載にしている。多く積みすぎてもピークカット(捨てる部分)が多すぎて損」

「1台のパワーコンディショナーにつなげるパネル枚数に制限がある。多くのパネルをつなげるパワコンもあるが、2倍程度が安全域」

低圧発電所での蓄電池の可能性は?

10年のFITが切れ始めた家庭用太陽光発電では、蓄電池の販売競争が加速しています。売電するのではなく、一部を自家用として使うことで、災害時にも電気が使えたり、買うよりも安く電気が使えるからです。

 

では低圧など産業用ではどうなのでしょうか?

「まだ全然価格に合わない(電池が高すぎる)」

「産業用の自家利用分に使うという小容量の蓄電池もあるが、契約が異なるので(全量売電契約ではなく余剰売電契約にする必要あり)」

電力抑制はさらに広がるか?

この夏、九州電力が初の電力抑制を実施したことが話題になりました。電気が余っているので、太陽光発電所からの電気を買い取らないという措置のことです。これは今後どうなるのでしょうか。

 

「九州でも低圧は対象外だった。これだけの数のある発電所をどうやって抑制するのかを考えると、考えにくい」

「電力抑制を気にされるお客様が多いので、免責1時間の抑制保険を用意した」

「(九州などの)発電所が多いところはともかく、関東圏ではそもそも必要な分しか認可がおりていない。20年間は大丈夫だと思う」 

土地は賃貸か売買がいいのか?

太陽光発電投資では、土地を購入するパターンと土地を借りるパターンの2つがあります。借りるパターンは毎月のコストが上がりますが、初期費用が減少します。

 

「そもそも太陽光発電に向いた土地がなくなってきている。残った土地はへんぴなところで、そもそも地主さんが手放したがっているところが多い。賃貸の物件自体が減っている」

「20年のFIT期間を超えたあとも、5円程度では電力を買い取ってもらえることが見えてきた。ローン完了後、賃貸だとパネルを撤去しなくてはならないので、少しでも売電できるのなら持っておきたいというお客さんが増えている」

入札になった高圧は今後どうなるのか?

FITの価格下落とともに、高圧発電所も従来の一律FIT価格から、入札によってFIT価格を決定するよう制度が変わろうとしています。そうなると、高圧発電所のニーズはどうなっていくのでしょうか?

 

「リスクがたいへん大きくなったので、タダみたいな土地でないと採算が合わない」

セカンダリーマーケットは出てきているのか?

現在の太陽光発電所は、新規に設置するものがほぼすべてです。ただし今後FIT価格が低くなるにつれて、新規の発電所設置は減少し、太陽光発電所がほしい人は既に運営中の発電所を買い取るというパターンが考えられます。この発電所を売買する場をセカンダリーマーケットといったりします。

 

「現在は、高圧で事業者さん同士で譲渡ということはあるが、多対多で取引する場はないと思う」

「現在はないが、今後ニーズが出てくるのは間違いない」

 

会場では、18円案件の提示がたくさんあり、さらに一部21円、24円の案件も紹介されていました。いずれも利回りが10%を超えるように調整されています。今後はますます新規発電所は厳しくなってくると思うので、欲しい人は駆け込みということで、見てみるのもよさそうです。

 

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