FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

10条のアドバイス 『ウォール街のランダムウォーカー』12版再読 第12章

『ウォール街のランダムウォーカー』の中でも、12章はFPが語りそうなアドバイスの章です。米国民が対象に書かれているため、日本人にとっては関係ない話も多いのですが、そのいくつかは普遍的なマネーリテラシーとして参考になります。

第1条 元手を蓄えよ

資産を増やしてFIREするカギは、「大化けする可能性の大きい銘柄や投資信託を見つけるためのチケットを手に入れることだと思っている人が多い」と著者は書きます。しかし、

財産を増やすための原動力はあなたの「貯蓄」であり、貯蓄するには強い意志が必要なのだ。

これは、どんなFPでもそういうことですし、定番普通オーソドックスな考え方です。でも、だからこそ、これが真実でもあります。

 

その上で、「貯蓄をどのタイミングで始めるかではなく、今すぐ始めることの「時間価値」のほうが重要なのだ」と説きます。つまり、時間とは複利を味方につけることであり、貯蓄に回す額と同じくらい、早いことが重要なのです。

第2条 現金と保険で万一に備えよ

手持ち資金をすべて投資に回してはいけません。現金を残しておき、保険に入りましょう。これもFPが言う定番ですが、ぼく自身も全面的に同感です。ただし、問題は「どれだけの現金」かということと「どんな保険に入るか」ということです。

 

現金については、著者のアドバイスは、下記2つに集約されます。

  • 医療保険や労災保険でカバーされている人なら、3カ月分の生活費を賄える手持ち現金
  • 子どもの大学の授業料といった、近い将来に予想されるまとまった支出に対しては、銀行のCD(定期預金)といった短期預金の形で運用
  • 保険は、家と家財、それに自動車保険。そして健康保険と傷害保険。さらに、一族の稼ぎ頭は生命保険に入っておくべき

これを日本に置き換えるとどうでしょう。皆保険制度によって、医療保険は完備。サラリーマンなら労災保険も基本入っています。それを考えると日本人の場合はこうなります。

  • 生活費3カ月分と近い将来予想される支出の現金
  • 家財保険、任意自動車保険、傷害保険、生命保険

ただし、保険については下記の指摘もしています。

  • 貯蓄型保険の保険料の大半は貯蓄に回るのではなく、代理店の販売手数料や販売経費の名目で差し引かれる
  • 60歳以上の人の生命保険保険料は跳ね上がる。この年齢だと、カバーするリスクは早死の可能性ではなく、長生きしすぎて蓄えが底をつくリスクになる
  • 変額年金保険は、手数料が高く、元本保証の費用も高いのでやめた方がいい

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第3条 現預金でもインフレヘッジ

米国では下がったとはいえ3%程度のインフレが続いてきました。そのため、現金を持つことはインフレによって価値が目減りします。これをヘッジするために、MMF、CD、短期国債などさまざまな商品が用意されていますが、日本では状況が異なります。

 

もう何十年もインフレはなく、どちらかというとデフレであり、そのためインフレに対応する商品も用意されていません。

第4条 節税対策と年金制度の活用

著者も節税を勧めます。「是非考えていただきたいのは、あらゆるチャンスを利用して免税措置を活用し、どうすれば税金がかからない形で蓄財することができるかということだ。と言うのは、老後に備えた貯蓄を運用して得た果実に、また税金を課されるのは、ほとんどの人にとって理不尽だからだ」。

 

ただし、ここで紹介されているのはIRAなど米国の制度です。日本でいえば、iDeCo、NISA、退職金控除などをしっかり活用しましょう、ということになるでしょう。

第5条 運用目標をはっきりさせる

とかく、投資初心者ほど、「とにかく高いリターンが欲しい」と思いがちです。ところが、投資の世界では高いリターンは高いリスクを取って初めて得られるものです。ここでいうリスクとは、価格変動の大きさであり、つまり「一夜にして資産が50%失われても、安眠できますか?」という心の強さが重要になります。

 

ここでは、安眠度「熟睡」の銀行預金から、「ときどき夢を見る」の公社債、そして「何度か寝返りをうち、時々目が覚める」株式分散ポートフォリオ、「悪夢も時々混じる」という不動産や小型成長株分散ポートフォリオ、「しばしば夢をみて睡眠不足になる」新興国株式分散ポートフォリオまで、いくつかの投資方法を、安眠度で分類しています。

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第6条 マイホームの活用

自宅、あるいは不動産に投資するREITについて、筆者はこう書いています。

不動産投資のリターンは、インフレが加速している局面では株式を上回る傾向がある。(中略)とりわけインフレが進行する局面では、最高のインフレヘッジ資産になっている。

そのため、日本でも同じようにさまざまな税制優遇がある自宅の購入だけでなく、「ポートフォリオを盤石にしたいなら、保有資産の一部をREITに投資することを強く勧めたい」と書きます。

 

これは、歴史的に不動産が株に匹敵する値上がり益と配当利回りを上げてきたことだけでなく、異なるアセットクラスを組み込むことで、更に分散効果が高まるからです。

第7条 債券市場に注目

日本では債券投資は全く人気がありませんね。それでも、債券は株式と並ぶ投資のメインストリームです。過去を振り返るとこうでした。

  • 第二次大戦後から1980年にかけて債券市場は投資対象としてはひどいところだった
  • ところがその後30年間は、債券投資がもたらしたリターンは素晴らしいものだった
  • 2010年代以降、前代未聞の低金利が続いている中で、債券投資には十分な注意が必要

債券といえば世界的に米国債であり、そこには利付債/ゼロクーポン債などの種類や、短期、長期、超長期など年数もさまざま、またインフレ調整国債(TIPS)など、目的に沿ったさまざまなバリエーションがあります。さらに、ジャンク債(ハイイールド債)の市場も活発です。

 

現在は将来に向けた金利上昇局面にあり、国債への投資は値下がりトレンドがあります。債券投資からリターンを得る方法は金利水準だけではありませんが、あまり有利なタイミングでもありません。

 

それでも、ジャンク債商品などは、十分に分散すれば株式並に高いリターンを出してきたのも事実。また値動きが株式とは異なるので、分散効果も期待できます。

第8条 金、ダイヤ、書画骨董、コレクター・アイテム

著者は、「金投資については、本書の過去の版で、私の見方は一貫していなかった」と書いています。21世紀初頭にはダウンサイドリスクが小さいということで、かなり前向きに位置づけていたが、価格が上昇した現在はとても積極的には勧められないとしています。

 

一方で、分散の観点から5%ほどの金組み入れには積極的です。

幅広い分散投資を行っている投資家の場合には、金を少々保有するのは悪くない。というのも、金価格の変動は他のすべての金融資産との相関が非常に低いからだ。

そのほかのオルタナティブ投資には否定的です。ダイヤは売買手数料が高く、売りつけようという電話は掛かってきても、買い取りたいという電話は掛かってこないと書いています。コレクター・アイテムについても、儲けている人はほとんどいないといいます。

 

ダビンチの「サルバトール・ムンディ」は1500年代初頭に50万ドル相当で売られていたものが、2017年のクリスティーズのオークションで4億5000万ドルで落札されたことが話題になりました。大儲けだと思いますか? 実はこれを投資と考えると、年率にするとたったの1.35%だったというのです。

 

また、配当や金利を生まない一方で、保管や手入れ、保険料などのコストが掛かる点も指摘します。そう考えると、配当や金利は生みませんが、保有コストがかからないNFTは、コレクター・アイテム投資としては確かに優秀なのかもしれません。

 

ヘッジファンド、プライベート・エクイティ、ベンチャーキャピタルファンドにも否定的です。その理由は手数料が法外に高いから。機関投資家は別として、一般投資家家には無縁というスタンスです。

第9条 投資にかかるコストに目を配る

この10年でネット証券の台頭もあり、売買コストは大きく引き下げられました。株価や債券価格の変動については、投資家にはどうしようもありません。ただし、コストに関しては、意思さえあれば十分コントロールできるし、税金についてもそうです。

コントロールできる要因は注意深くコントロールすることこそ、すべての投資戦略の要なのだ。

第10条 分散投資が大原則

最後の10条には改めて分散投資が重要だと説きます。「分散」はこの再読でも何度も書いてきましたが、単に「1つのカゴにすべての卵を盛るな」ということではなく、値動きが異なる資産を分散して保有すると、リスクを抑えながらリターンを増やせることが特徴です。

 

この分散は現代ポートフォリオ理論の最も重要なことであり、誰も否定できない唯一のフリーランチです。だからこそ、株式が最も重要だとしながらも、ほかの資産も「分散」のために少し保有することを勧めているわけです。

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日米の違い

この10個のアドバイスを眺めると、極めて一般的でオーソドックスで、特に独自性もないごくごく当たり前のアドバイスだということが分かります。

 

今回、14年ぶりに再読しましたが、ここに書かれている10条がぼくにとってもとてもしっくりと来て、全てにおいて同感だということに、ほっと胸をなで下ろしました。

 

第13章 インフレとの戦い方

 

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