FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で自由主義者、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

FIRE達成者が犯しがちな"間違い"は4つある

MONEY INSIDER誌に「FIRE達成者が犯しがちな"間違い"は4つある」という記事がありました。スパコンSE(@hyoshionnu)さんがこれについて記事を書いていて、面白かったので、ぼくも乗っかってみました。

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1. 何かから逃れるために退職する

いきなり重い「間違い」が来ました。要は仕事から逃げるためにFIREするのは間違いだ、っていうい話です。なんか綺麗事としては分かります。でも、仕事が好きで好きでたまらないのに辞めてFIREする人なんて、本当にいるんでしょうか?

 

何をかくそう、僕自身も「仕事が嫌で逃げて」FIREした一人です。まぁはっきり言って仕事が楽しくありませんでした。出世して管理職になったものの、やることといえば、会議、面接、評価、資料作り。会議、面接、会議、会議……。給料は確かに高くなったものの、なにこれ、楽しいの?

 

もちろん会社の中でポジションが上がるということは、裁量も増すということで、けっこうな資金を投じた新規事業とかもやらせてもらいました。結果はまぁ1勝1敗といったところでしょうか。事業において100発100中というのはリスクを取らなすぎだと思うので、トータルで見れば良い成果だと思っていますが、周りの評価は知りません。ただ、自分がいなくても事業が回るようにするというのが基本だと思っているので、軌道に乗ったら僕の手を離れていきました。なんだかな。

 

ぶっちゃけ、出世競争に負けてもういいかな。と思ったところもあります。仕事つまんないなぁと思いながらも、人並みに出世欲はあるんですね。社長になるのは厳しいかなと思ったあたりから、別のキャリアパスを考え始めたのも事実です。子会社の社長になって上場を目指すっていう選択肢もなくはないわけですが、これもまた面白そうには思えなかった。

 

要するに、仕事から逃げたわけです。

2. 実験が足りない

せっかくFIREしたならルーティンに満足するのではなく、いろいろなことにトライして実験してみろ――という主張です。

 

こっちのほうは実のところうまくやれています。というか、昔から新しいことにトライするのが好きでした。それが日常のルーティンになってしまうと、だんだん関心が薄れていくタイプ。

 

FIREすると、自由にできる時間は相当に増えます。お金は?というと、もともとはちゃんと節制して過ごす考えでしたが、蓋を開けてみると好調な相場に支えられて、資産額はセミリタイア時の3倍くらいになっています。なにかにトライすることに対し、時間もお金も制約条件にならないという幸せな状況です。

 

ただ制限が何もないわけではありません。一つは体力です。若いときは徹夜してでも趣味に没頭したものですが、もはや身体がもちません。激しいスポーツをしようにも、動体視力や反射神経が付いていきません。しばらくサーキットを走ってタイムを削るのにやっきになっていたのですが、もう身体がもたないと思って、シビアに走るのは止めました。スキーのワンメイクやモーグルが趣味だったのですが、腰と膝を痛めてしまい、もうハードな滑りはできません。

 

そして最も貴重なリソースがパッション=情熱です。何事も情熱がなければ初められませんし、情熱が消えれば継続もできません。受け身の消費ならば、例えば単に動画を見るだけなら情熱は不要ですが、何かを作り出すとか新しいことを習うとか、スポーツを行うとか、そういうことにはパッションが重要。で、パッションは簡単には出てこないですし、ふとした瞬間に失ってしまうものなのです。

3. 経済的に自立できたことに誇りをもっていない

これは要するに、「僕は無職です。資産を構築していわゆるFIREしました」と胸を張っていえるか? という話ですね。

 

米国は比較的富を築いた人の早期リタイアに寛容な国だと思っていたのですが、それでも、

私は、経済的自立について話すのを完全に避けたり、「在宅でコンサルティングをしている」など、何らかの仕事をでっち上げたりする人を見てきた。

という傾向があるものなんですね。

 

確かに「資産があって無職です」と言うことは、嫉妬ややっかみの対象になるものでしょう。特に日本では米国以上にその傾向があるんじゃないかと思います。先日のFIREイベントで話した内容が記事になり、それがNewsPicksやヤフーニュースに掲載されたのですが、そのコメントを見ると、次の2つに大別されました。

  • 私はFIREなんてしたいと思わない
  • FIREなんて夢のまた夢だ

記事自体は、「FIREを目指す人はこのくらいの資産を構築すべきだ、またそのために最も重要なパラメータはこれだ」ということを書いたもので、別にFIREオススメ!とも誰でもFIREできる!とも書いていません。それでも上記のような反応があるわけです。

 

幸い、ぼくはXやブログを通じて投資家・FIERコミュニティの皆さんと交流させていただいています。この中のメンツだと、資産数億円なんてごろごろいるし、ほとんどの人は資産額なんて気にしてません。嫉妬もやっかみも受けることなく、「あの銘柄どうだった?」「日銀のETF売却をどう活かそう?」「9月の優待、どれがオススメ?」「最近の融資状況ってどうよ?」「うまい節税の方法は?」なんて話題で話ができるわけです。

 

そういうコミュニティがあって初めて、経済的に自立できたことを恥じたり隠したりすることなく、誇りを持てるというのが日本のFIRE界隈の現状なのかもしれません。

4. 退職するのが遅すぎる

そうそうそうそうそう! これはほとんどのFIRE達成者が振り返って、間違いだったと話すことです。中には必要生活費の見積もりが甘くて資産が足りなくなり「FIRE卒業」なんて方もいますが、ぼくが知る限りほとんどのFIRE達成者は、必要以上に資産を構築してしまうものです。

 

ぼくは2018年にセミリタイアし、2023年に退職してFIREしたわけですが、セミリタイア→FIREに5年もかけてしまいました。この間、コロナ禍もあって完全リモートワークだったこともあり、敢えて退職する理由もなく過ごしてしまったというのが真実なのですが、それでも退職後の自由度と精神的・肉体的な開放感は強烈でした。

 

当初は2019年くらいには退職してFIREしようと思っていたのですが、それをずるずる伸ばしてしまったわけで、振り返ると初志貫徹してさっさと会社を辞めればよかった。そんなふうに思うのです。

総合得点

さて4つの間違いについて自分はどうだったか振り返りをまとめます。Xが間違いをしてしまった/◯は間違わなかった、です。

  1. 何かから逃れるために退職する ✗
  2. 実験が足りない ◯
  3. 経済的に自立できたことに誇りをもっていない ◯
  4. 退職するのが遅すぎる ✗

仕事から逃れるために退職してしまい、かつ退職するのが遅すぎるという”間違い”をしてしまいましたが、幸いなことにいろんな実験を繰り返していますし、経済的に独立していることに誇りも持っています。2勝2敗。それが僕の状況でした。

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FIRE実現の方程式は「貯蓄率」で決まる

先日、FIREイベントを開催させていただきました。そこで少し話した内容が、MONEY INSIDER誌で記事になっていたので、少し補足しつつ、FIRE実現のために最も重要なことは何かを考えてみたいと思います。

FIRE Talk2025夏、開催

8月に実施したイベント「FIRE Talk2025夏」では、40人以上の参加者の中、少し話をさせていただきました。

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その話の内容を、MONEY INSIDER誌のほうで記事にしてくださいました。ありがとうございます!

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貯蓄率はFIREにとって決定的なパラメーター

記事にもあるように、FIREを目指すにあたり決定的に重要なパラメータは、収入でも運用力でもありません。実のところは「貯蓄力」こそがFIRE実現を左右します。もう少しそれを噛み砕いて説明しましょう。

 

議論の前提として、年間生活費の25倍の資産を構築できたらFIREが実現可能だとします。これはいわゆる4%ルールと整合性のある値で、概ねFIRE達成者は納得感のある数字だと思ってもらえるのではないかと思います。

 

つまり、年間生活費が300万なら7500万円、500万なら1億2500万、700万なら1億7500万、1000万なら2億5000万ということです。

 

ではこれだけの資産を構築するのにどのくらいの年数が必要でしょうか。大学卒業後22歳から資産構築に乗り出すとして、18年かかるなら40歳でFIRE、23年かかるなら45歳でFIRE、28年かかるなら50歳でFIREできるということです。そして38年なら60歳になっているので、もうFIREというには遅いかもしれません。32年かかっても25倍に達していなかったら、年金に頼らなければ老後を過ごせないともいえます。

 

ではこの年数を短くするには、何を頑張ればいいのでしょうか? 投資のリターンを大きくする、入金力を高める? 無駄遣いせず節約する? どれも間違いではありませんが、その効果は微妙に違います。最も効果が大きいのは「無駄遣いせず節約」なのです。

貯蓄率が重要な理由

ではなぜ節約が重要なのか。絶対的な資産の量を求めるなら必ずしも節約が重要とはいえません。でもFIREする=生活費の25倍の資産を作るなら節約は重要です。

 

それを理解するために、生活費をベースに方程式を考えてみましょう。まずは運用を行わない場合に、FIREに達するまでの年数がどのくらいかかるかを考えます。

 

必要資産 = 生活費 x 25 = 収入 x (1-貯蓄率) x25

貯蓄率 = (収入 - 生活費) / 収入 

必要資産 = (収入 x 貯蓄率) x 年数

 

これらを代入すると、次のようになります。

収入 x (1-貯蓄率) x 25 = 収入 x 貯蓄率 x 年数

25 x (1-貯蓄率) =貯蓄率 x 年数

年数 = 25 x (1-貯蓄率) /  貯蓄率

 

この式からはいくつかのことが分かります。まずFIREを目指すときに、収入というパラメータは相殺され消えてしまうこと。つまり無関係になるということ。FIREに影響するパラメータは、貯蓄率だけだということが分かります。

 

また、FIREまでに必要な年数は(1−貯蓄率)に比例するので、貯蓄率が高いほど短くなることが分かります。また貯蓄率で割っているので、貯蓄率に反比例することも分かります。要するに、貯蓄率のアップはダブルで効いてくるのです。

 

ここで貯蓄率に50%を入れてみると、FIREに必要な年数は25年であることが簡単に分かります。

貯蓄率か運用リターンか?

ではここに資産運用も加味したらどうでしょうか。例えば、運用なしでは貯蓄率50%の場合25年の歳月がFIREに必要ですが、年率5%で運用できればFIREまでの年数は次のようになります。

では貯蓄率を上げるのではなく、運用利回りをアップさせたらどうなるでしょうか。そのほうが効果的でしょうか。式は省略して計算した表だけ掲示すると、イベントでも紹介したように下記のようになります。

 

これは横軸に運用リターン(年平均)を、縦軸に貯蓄率を取ったもので、数字はFIREまでに必要な年数を表しています。これを見ると分かるのは、運用リターンを上昇させてもなかなかFIREに必要な年数は短くならないが、貯蓄率を上げると急速に短くなるということです。

例えば、貯蓄率30%のラインを見ましょう。運用利回り5%だと28年でFIRE可能です。ここから、運用利回りを約2倍の9%に上げられたとしても21年にしかなりません。ところが貯蓄率を30%から50%に上げただけで17年まで短縮されます。

 

その上、運用利回りを上げるのは至難の業で、20%近い運用利回りをFIRE達成可能な年月にわたって出し続けられるなら、バフェットの再来と言われるでしょう。一方で、貯蓄率の改善は、努力しだいで可能です。

FIREを目指すなら節約を極めるべし

というわけで、FIREを目指すなら、運用をうまくするよりも貯蓄率をアップすることが大きな効果があるということを見てきました。

 

もちろん、過度な節約はそれが本当に幸福な人生なのか? と疑問符を付けられますが、何に幸せを感じるかも人それぞれ。そもそもFIREなんてしないで、ずっと働き続けるほうが幸せという人のほうがメジャーなわけで、こと人生の意味合いとか幸福とかを言ったら、そこに正解はありません。

 

それでもFIREを目指すというのなら、もっと貯蓄率に目を向けてほしいと思います。それはFIREの成功率を大きくアップさせるからです。そしてこれは貯蓄率の話なので、支出を減らさなくても収入を大きくすれば改善できます。年収500万のときの生活レベルのままで、年収が1000万円になれば、貯蓄率は激しく改善されるわけです。

 

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資産は何のためにあるか? 「時間と自由を買うため」

Xで興味深いポストが流れてきました。「資産1億円が一番楽しくて、資産が5億を超えてくると幸福感が著しく低下する」というのです。その理由は? で九条はどう思うのでしょうか。

資産1億が一番楽しい?

くだんのポストはこちら。

なぜ1億が楽しくて、5億と超えると幸福感を感じないかというと、「何でもお金で買えるようになってしまうから」だということです。いつでもなんでも簡単に買えるよりも、仕事で稼いだりときに奮発して良いものを買うというのが、バランスよい幸福の領域では、という意見でした。ふーむ。

 

対して、実際に5億を超えているFIER生活中さんは、「別に幸福感は低下しない」とコメント。

さらにぼくは、次のようにリポストしました。

資産は何のためにあるのか?

資産があれば、いいモノやいいサービスが買えます。「お金で買えない価値がある。買えるものはマスターカードで」。このMastercardの名コピーは、逆説的に世の中のほとんどのものがお金で買えることを示しています。

 

ただ、高いブランド品とか豪華な外食とか、お金はそういうものを得るために使うものだ――と考えると、資産がたくさんあることの意味はあまりないかもしれません。こうしたものを、何かのご褒美だと考えるなら、それが頑張った結果手に入るべきで、簡単に手に入ったらご褒美感ないですものね。

 

一方で、お金は何か贅沢品をご褒美で買うためのものだけではありません。ぼくが考える資産の最も意味ある使い方は、自由と時間を買うというものです。

 

時間を買うというのは、例えば歩く代わりにタクシーを使うとかが最もシンプルな例でしょう。でも、この概念をもう少し進めると、お金を得るために仕事をしなくてはいけない時間を、お金で買うところに行き着きます。よく、年収1000万円の人は時給5000円だ、みたいに言うことがありますが、裏を返すと、1000万円あれば年収1000万円の人の1年間をまるまる買うことができるのです。

 

この最たるものがFIREです。働かないでいい時間を資産で買うのが究極のFIREのの意味合い。だから。よくある「◯億円あればFIREできますか?」という定番の質問は、年収1000万円の人なら1億円あれば10年分買えますよ? という意味だったりします。

 

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もう一つの自由というのは、資産によって購入するというよりは、資産があることで得られるものというのが近いでしょう。世の中、「◯◯しなくてはならない」いろいろなことがあります。日常のことから人生の大問題まで、不確実ながら起こる◯◯には枚挙の暇がありません。病気になれば医療費がかかりますし、子どもが進学すれば授業料がかかります。長期旅行に行きたければ会社を休まなければいけませんし、旅行先でほしいお土産を見つけてしまうかもしれません。

 

これらはお金で買えないものもありますが、その多くをお金で買うことができます。実際に買う、買わないは将来のことなので分かりませんが、必要になったときにお金で解決できる。それだけの資産がある。その状態は、一つの自由を得たと言えるのではないでしょうか。

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FIREは酸っぱい葡萄か『1億円を貯めてFIREを目指した男の人生』

しばらく前に「FIRE卒業」とか「FIRE失敗」とかが話題になりました。個人的には「うーん? そんなにFIREが不安かね?」と思ったものですが、確かにFIREが合わない人はいそうです。というより、FIREの意味を取り違えているようにも思います。

 

そんなことを思いながら楽しく読んだのがKindle無料漫画の『1億円を貯めてFIREを目指した男の人生』です。

T大卒、大手企業に入社しすぐにFIREを目指す

主人公のヨシオはT大卒のエリートで大企業に入社しますが、当初から目標はFIREでした。45歳までに1億円を貯めてFIREする。そのために飲み会にも行かずデートもせず、無料でできる娯楽を楽しみながら、ひたすら積立を進めます。大手企業で給料もいいのですが、あえて早く仕事を終わらせずのんびりと2倍3倍の時間をかけ、残業代もゲットするという生き方をします。

 

一方、同期の桐山は会社も生活もエンジョイ。貯金なんてせずよく遊び、よく働く。結婚してお金もかかるということで、さらに仕事に精を出しています。

 

そんなヨシオは会社での評判も悪く、若くして窓際のような立場になりますが、ヨシオ自体はそれもまたよし、給料が下がらなければ積立ができるということで、とにかく意識が向くのは資産額のみ。40歳には予定の5年前倒しで1億円に到達しました。

FIREへの不安、FIRE後の虚無

インフレもありもう少し資産が増えてからFIREを決断しようとするヨシオ。資産はさらに積み上がり43歳で1.5億円に達しました。でも不安は収まりません。

  • もしインフレでFIREを継続できくなくったら
  • もし税金や社会保険料がさらに上がったら
  • もし趣味に飽きて暇になったら

「もともと人生の選択肢を増やすためにFIREを目指していた。FIREすれば無限の可能性があるように感じた」

「しかしいざFIREできる状態になると、おもったより選択肢がないように思える」

 

悩んだヨシオは1年間休職し「お試しFIRE」をすることにします――。

とまぁこんな感じの話です。これい以上はネタバレにもなるので、書きませんが、日々資産額の伸びを見てニヤニヤしつつ、でも本当にFIREしても大丈夫だろうか? と悩む姿はなんかありそう!な話ですね。

FIREは酸っぱい葡萄か

このマンガを読んで最初に思ったのは「FIREは酸っぱい葡萄か」ということです。イソップ童話でキツネがどうしても手に入らなかった葡萄を「どうせ酸っぱくてまずいだろう」と見下すという話ですね。

 

FIREに憧れる人はたくさんいますが、なかなかFIRE可能な資産を貯めるのは簡単ではありません。となるとFIREしても「どうせ飽きて続かないだろう」「働かなければ不安に違いない」などと思いたくなるのはまさに酸っぱい葡萄。

 

「FIRE卒業」が一時メディアで大きく取り上げられましたが、「FIREして本当に幸せです」なんて人より、「FIREしたら思ったほど楽しくなかったです」のほうが、多くの人達の共感を得られるのはよく分かります。酸っぱい葡萄なわけです。

 

というのも、ぼくはFIREした人を本当にたくさん知っていていろいろと交流もさせていただいていますが、「FIREして失敗した」と思っている人は一人もいないからです。それどころかぼくも含めてほとんどの人が「もっと早くFIREすればよかった」と言います。

 

ちなみに、FIREしていたけど働き出すのは、FIRE失敗とは言わなくていいのではないかと思います。何度も書いていますが、FIREの本質は経済的自立というFIにあって、REは「現在のキャリアからのリタイア」でしかなく、FIRE後何か仕事がしたくなったらすればいいと思うし、実際ぼくも仕事は(生活やお金のためではなく)しているからです。

 

ヨシオもそうですが、FIREしたのに一人でいることがしんどくなって復職するとかは、FIREの意味を狭く捉えすぎているのではないでしょうか。「FIREしたら働いてはいけない」とか「FIREしたら一人で過ごさなければいけない」とか、そんな偏見がヨシオにもあるようです。もっと自由に、働くことはお金以外に得られるものも多いのですから、好きなようにすればいい。そういう選択肢があることがFIREの面白さだと思うのです。

FIREをゴールにしない

一方で、本書のテーマである「FIRE自体をゴールにしない」には強く共感します。ヨシオはFIREのためのプランは細かく考え、FIREというゴールを目指してきました。しかし、FIREしたあとのことは考えていなかったのですね。

資本主義が発達してから、ヒトの人生の大部分を仕事が占めるようになりました。でも、本来は仕事なんて人生で目指したいことの一部であって、人生で取り組みたいことなりたい人物というのは数多くあったはずです。いつの間にか、仕事でしか自己実現ができないというように我々は刷り込まれてしまいました。

 

仕事に憎しみを覚えながら早く退職したいという思いと、仕事こそが人生の自己実現の要であるという思い。この相反する思いを両方持っているのが現代人です。本来は、人生の面白さは仕事以外にあると思えてこそ、FIREしたあとの自由を満喫できるのですが、FIREだけをゴールにしてしまうと、一刻も早くFIREするために全精力を賃金を得るための仕事と投資活動に費やすという本末転倒の状態になります。

 

あれがやりたい、これもやりたい。会社員でいると実現できない。だからなんとかお金を貯めて投資して資金を作り、経済的自由を手に入れたり。こういう発想の人はまず退職して飽きるなんてことはありません。山登りが大好きで何ヶ月も登っていたくて、ついに会社を辞めてしまった――なんて人はこのパターンですね。

 

映画や読書、音楽、旅行。世界にはもっともっと触れたいものがあって、FIREすればいくらでもそうした事柄に触れていられる。このパターンもFIRE生活を満喫している人が多いです。資産が多ければ旅行とかに行きまくりですし、それほど資産がないFIREでも読書などならほとんどお金はかかりません。まさに晴耕雨読生活だっていいのです。

 

FIREはするものの、自分のやりたい仕事だけを選んでお金のためではなく仕事をする。ぼくは今のところこのパターンですが、これもよくある成功パターンでしょう。脱サラの最も難しく辛いことは、お金のためにやりたくもない仕事をやらざるを得なくなることと、それでもお金がなくて生活レベルが落ちまくることです。FI状態なら、それを気にせずNPOのようなつもりで仕事に携われます。

サラリーマン脳から離れよう

まだイメージがわかない人は、中小企業のオーナー社長が本当につまらない人生を送っているか考えてみましょう。会社に行って仕事をしてもいいし、仕事は部下に任せてゴルフにいってもいい。ビジネスがカネは稼いでくれる。こういう状況にある人が、「飽きたので会社員に戻りたい」と思うでしょうか。

 

大きくなったら会社員になったり自営業として好きなことをやる。多くの人は子どものころにそうしたイメージを刷り込まれますが、実際にはお金の稼ぎ方には4種類があって、そのうちの2つは、全く自分では労働をする必要がありません。いわゆるキャッシュフロー・クワドラントです。

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2023年は完全FIREした年でした キャッシュフロー・クワドラントで考える - FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

 

会社員(Employee)から投資家(Investor)に移行するのがピュアなFIREですが、この2つは対極にある生き方です。それは合う人、合わない人がいるのも道理。投資家に移行する前に、自営業(Self-Employed)や実業家(Business Owner)を目指してみるのは、失敗しないFIRE戦略だといえるかもしれません。

 

いずれもFIを達成していれば、うまくいかなくてもいつでも投資家(Invester)へジョブチェンジできるわけですから。

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FIREのために今日から始める17の習慣

Forbesが「経済的自立と早期リタイア「FIRE」を実現するため、今日から始めるべき習慣17選」という記事を挙げています。何人かのブロガーの方が取り上げていて、なかなか示唆深かったので、僕の考え方も書いておこうと思います。

ForbesのFIREのための17の習慣

Forbesの「経済的自立と早期リタイア「FIRE」を実現するため、今日から始めるべき習慣17選」は翻訳記事で、著者のWilliam Arruda氏は投資家というよりはキャリアップとかパーソナルブランディングとか、自己啓発系を得意としている方のようです。

forbesjapan.com

この17の習慣を誰が考えたのかは記事では明らかにされていませんが、読む限りではWilliam Arruda氏の主張のようです。

 

この17の習慣について、FIREされたスパコンSEさんと、

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氷河期ブログを書かれているななしさんが、このネタでブログを書かれていました。

hyougaki.xyz

このバトンを引き継ぐ形で、17個の習慣について九条の考え方や実践状況をまとめておきます。

給与交渉術を身に付ける

いきなり給与交渉です。みんな給与交渉ってやったことあります? ほとんどの日系企業では給与は交渉して勝ち取るものじゃなくて、天から恵まれるもの的な位置づけじゃないでしょうか。

 

ただ部下の昇給を査定する立場だったこともある僕の意見としては、角が立たないように「給与上げてほしいです」くらいは定期的に言ったほうがいいです。愚痴ではダメです。真剣に主張し、どうせ聞き入れられはしないので、その時は「分かりました」と素直に引き下がるのがいいでしょう。

 

仕事ができる人の場合、会社側も辞められないようにリテンションに気を使います。それは希望の部署に配属するとか肩書をつけるとか、その人によっていろいろ考えますが、その中に「そういえば、あいつ、給料にこだわっていたな」というのがあると、ここぞというときに考慮するからです。

今すぐ貯蓄を始める

貯蓄の開始は重要ですね。貯蓄が先か節約が先かは難しいところですが、ぼくは貯蓄が先のほうがいいと思っています。節約はプロセスですが、貯蓄はゴールだからです。資産形成の初期は、「10万円貯まった」「100万円貯まった」という成功体験を持つのが非常に大事

 

だからとにかく100万円貯めよう!みたいにゴールを設定して、そこに向けて節約でも副業でも頑張るのはたいへん効果的。ここが習慣化できないと、FIREに至る前に資産がどんどん溶けていきます。

生活費を節約する(たとえその必要がなくても)

貯蓄を増やすためには、副業などで収入を増やす、支出を減らすという2つの方法がありますが、支出を減らすのはFIREにはたいへん重要です。支出を減らすというのは、貯蓄できる額が増えるだけでなく貯蓄率が上昇し、この貯蓄率というのはFIRE実現に最も重要なパラメータだから。

 

下記は収入が変わらないと仮定し資産を5%で運用したとき、貯蓄率によってFIREに至る(25年分の生活費を貯める)年数がどのくらい変わるかを示したものです。貯蓄率が上がると、急速にFIREが近づくのがよく分かると思います。

可能なかぎり年金積立口座に貯金する

この「年金積立口座」というのは米国でいう401kで、日本では個人版DC=iDeCoにあたります。またはNISAでもいいですね。投資をするなら、こうした非課税口座を使うのが必須だし当たり前だし、使わない理由はないです。

 

NISAだけでもいいという考え方もありますが、NISAは最大購入額が1800万円という上限があります。これが運用によって2倍になっても、残念ながらFIREには足りないので、ぼくはiDeCoも全力で利用することが大事じゃないかと思っています。

 

会社員時代は、企業版DCに拠出していましたが、さらに個人で上乗せ拠出できるマッチング拠出を全力で使っていました。

手数料の安い投資方法を選ぶ

これも必須だし当たり前だし、基本的には手数料が安いものを選んで失敗はありません。そういう意味では、オルカンとかeMAXIS SlimS&P500をみんな選好するのは、初心者じゃなくても正解です。ぼくも積立は基本オルカンです。

 

論理構造を間違えないでほしいのですが、手数料の安い投信以外は間違っているわけではありません。ポートフォリオの状況とかその人のステージ、リスク許容度によってはより適した商品もあるし、それは必ずしも手数料が安いものだとは限りません。

 

ただどれが自分に最も適しているかを見極めるのは極めて難しく、それが正解かどうかも結果論でしか判断しにくいものです。その点、最も合理的に平均値が取れるのが低コストインデックス投信であり、それは上級者においても正解の一つなのです。

複数の収入源を構築する

どうやら話を聞いていると米国は日本以上に副業は盛んのようです。そして日本でも副業解禁する会社は多く、それなりの収入源にはなります。ただ、ブログをもう7年書いている身でいうと、全然儲かりません。

 

いや、ブロガーさんでも僕の10倍、100倍稼いでらっしゃる方もいるし、いまならブログじゃなくてYouTube、TikTokでしょう? という意見もあるでしょう。ただそれでも、よほど大成功しない限り、ブログを書くよりコンビニでバイトしたほうが儲かる――というのが現実じゃないでしょうか。個人的には本業で給料アップを目指すほうが、効果が高いんじゃないかと思っています。

 「悪い債務」を徹底的に避ける

記事では良い債務(住宅ローンなど)と、悪い債務(高利のクレジットカードローンなど、不要なローン)という区分けをしています。どこで良い債務と悪い債務を区別するかは難しいところですが、少なくとも10%を超えるような金利の債務はさっさと返済すべきです。

 

僕が働き始めてからしばらく負っていたのは自動車ローンで、なんと年利は5.55%、60回=5年。途中から「なんてひどいローンだ!」と気付き、毎月少しずつ繰り上げ返済を行い、10回分くらい短く完済したのでした。

支出と純資産を記録する

記事にもあるように「測定できるものは管理できる」といったのはドラッカーでしたっけ。管理するためには測定することが重要です。特にFIREには、純資産額よりも家計支出のほうが大事なくらい。

 

1ヶ月にいくら使っていて、そのうち固定費はいくらで、変動費はいくらで、やろうと思ったらどこまで削減できるのか、また満足度に直結した支出はなんだったのか、できる限り把握すべきです。日本ならマネーフォワードがあるので、これは必須ツールだと思います。

ローン返済を繰り上げる

記事では住宅ローンについて触れています。が、ぼくは一定以上に金利が低い場合、無理に繰り上げ返済するよりも、期限の利益を有効活用したほうがいいだろうというスタンス。

 

これは株式投資だけやっているとわからないマインドです。不動産とか太陽光発電とか、与信を活用するビジネスを小さくても行ってみると、その意味が肌で分かると思います。

資産を最大限に活用する

記事の趣旨は、持っている家やクルマを貸したりして、手持ちのリソースをお金に換えようというものです。ただここは日本では状況が大きく違っていて、民泊は規制されていて素人が簡単に参入できるものではないですし、C2Cカーシェアのエニカなどもサービス終了してしまいました。

 

一番近いのは不用品を販売するフリマでしょうか。商品を仕入れて売るというのは、スモールビジネスの基本で、値決めと集客、顧客対応という非常に重要なところを学ぶことができます。僕はずっとAmazonマーケットプレイスを主軸にやってきて、数年前にメルカリに移りました。マケプレでは1万件に近いくらいの販売数量、メルカリでもすでに3000件弱を売り上げています。

FIREについて学び、目標に集中する

FIREについて学びの効果が大きいのは、テクニックというよりもマインドでしょう。特にFIRE後の生き方を知ることは、目標を現実のものとして受け入れるために重要です。メディアの中で話を聞くだけでは夢物語に思えても、知っている人が実現していることは、意外と自分にもできるものだと身近に感じさせてくれます。

 

留学とか転職とか副業の開始なども、周りが当たり前のようにやっていれば、自分にとっても当たり前に感じられるものです。FIREについても、FIRE済みの人に「どうやってFIREしたのか」「FIREしてどうなのか」を実際に聞くことが最大の学びになると思います。

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自由のマインドセットを取り入れる

「自由のマインドセット」って何? と思ったのですが、どうやら周りに流されることなく、自分の中に価値判断の軸を持ち、実行しようということのようです。幸いぼくは、昔から人の意見を全く気にしなかったので、自分がいいと思った選択だけをすることができました。逆に、変なやつって思われてましたけど。

 

見栄消費からの脱却は節約のキーだともいえますが、投資においても周りの人の意見に従わないということが実は重要です。インデックス投資だけであれば別にどっちでもいいのですが、個別の金融商品に投資するなら、自分が評価しているのに周りが「ダメ」だと言っているものが、最良の投資先なのです。

キャリア選択において、戦略的に動く

キャリアの選択の際、収入だけでなく面白いとか自由度の高いことも考慮しようというもの。ま、これ言うは易く行うは難しですよね。これまでサラリーマン時代「ウチにこないか」と3回くらい誘われたことがあります。

 

いずれもお断りしたのですが、一つは今のメガベンチャーの創業してしばらくのタイミングで、執行役員ポジションでのお誘いでした。詳細まで詰めませんでしたが、ストックオプションのことだけ考えれば、転職したほうがよかったのは間違いありません。でも、どうにも仕事が面白そうにおもえなかったんですよね。こういう直感は大事です。

投資への積極性を保つ

定期的にポートフォリオを見直そうということのようです。うーん、これいるかな? 僕は投資が好きなので月に1回ポートフォリオと収益状況を見直していますが、最近のトレンドであるインデックス投資なら、何もしないで放っておくほうがいいかも。

 

ただ年に1回くらいは、純金融資産が貯金や保険の価値も含めていくらあるのかを棚卸しするほうがいいでしょう。それは人生の選択肢を確認する作業だからです。

生涯学習にコミットする

米国ではレイオフが一般的で、急にクビになることがあります。それに備えて普段から勉強し、自分の人的価値を上げておけよ! という話。これ、当然当たり前なのですが、雇用が守られている日本だと全然意識しない人もいるんですよね。

 

あと、誤解しがちなのが急に業務に関係ない資格を取ったり英語の勉強を始めたりすること。こういうの、ほぼ全く仕事のパフォーマンスに影響しません。やるなら、MBAを取るくらいしましょう。

強固な支え合いのネットワークを築く

なんかFIREのためにというよりも、会社員を生き延びるための習慣みたいな感じですが、確かにコネは重要です。ほとんどの話はコネからやってくるからです。ただ誤解が多いなぁと思うのは、コネというのは名刺交換した数のことではないということ。

 

一緒に仕事をしたときに、「この人は信頼できる」「この人の仕事の品質はいい」「この人なら安心して紹介できる」と思ってもらえること。これがコネです。現在フリーランスでいますが、自分で仕事を探したことは一度もありません。誰かから紹介されて仕事をいただくことがすべてです。

収入を食い荒らす消費を避ける

無駄な消費を避ける、特に自動車は値段に対する便益が小さいというのが記事の主張のようです。ま、アメリカはクルマ社会なので、クルマを買わないという選択肢がレアだということなのでしょう。

 

日本でもある程度の収入があるとクルマが欲しくなってしまう人、いますね。でもあまり乗らない。もったいないですね。東京に住む限り、レンタカーやタクシーで十分です。一時期、2人乗りのスポーツカーを所有していたのですが、家族で出かけるときはレンタカーやカーシェアをずっと使っていました。ちょっと面倒ですが、これで十分。そういうことです。

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投資家のラットレースに気をつける


「人生のラットレース」という言葉は、ロバート・キヨサキの『金持ち父さん貧乏父さん』で有名になりました。多くの人は、このラットレースから抜け出して経済的自由を獲得しようとしています。ところが、せっかく人生のラットレースを抜けても、新たなラットレースに参加しないように気をつけなくてはなりません。

人生のラットレース

ロバート・キヨサキの『金持ち父さん貧乏父さん』には、働いても働いても苦しい状況から抜け出せない人を指して「ラットレース」という言葉が出てきます。給料が増えたらその分支出も増える。結果、いくら働いてもいくら昇給しても、同じように支出も増え、苦しい生活から抜け出せない。

 

まるで回し車の中を走り続けているようなものだとしてラットレースと呼ばれます。

 

投資とか資産運用に関心があれば、ラットレースからの抜け出し方は簡単です。支出を抑え貯金をし、貯めたお金を株式や不動産、事業など自らお金を生み出すものに充てるのです。そうすれば、いつか、自分が稼ぐお金よりも資産が稼いでくれるお金のほうが多くなり、じきに資産だけの稼ぎで生活できるようになるでしょう。ラットレース卒業です。

投資家のラットレース

ところがラットレースから抜け出して経済的自由を得た人でも、ともすると今度は別のラットレースに参加してしまいます。際限なく資産額を増やす競争というラットレースです。

 

「●●は資産額▲億円だそうだ。オレはもっと持っているぞ」

「□□は△△億円もあるって。羨ましい。頑張って抜くぞ」

 

気持ちはわからなくはありません。資産額だって数字ですから、数字があったら相手より上を目指したいというのは本能ですよね。営業ならライバルより1万円でも高い売上を上げたい、スポーツならライバルよりコンマ1秒でも速く走りたい。そうして切磋琢磨して上を目指すわけです。

 

この気持ちはよくわかります。ぼくは他人のことはそれほど気にならないのですが、それでも過去の自分の記録を塗り替えたいという思いはあります。ゲームのハイスコアを更新したいという気持ちと同じです。過去の自分をどう乗り越えるか。その意味で、上を目指したいと思うのです。

 

ただ、世の中の多くのことについてはそれでいいのでしょうが、こと資産額については本当にそれでいいのか? とぼくは自問自答します。せっかく人生のラットレースから抜け出したのに、また投資家のラットレースに巻き込まれていないか? と。

 

何しろ、このラットレースにゴールはありません。1億の相手を上回っても3億がいます。3億を上回っても10億がいます。10億の上には100億がいて、その上には1000億がいます。よく前世代の起業家が、興した会社の売上を◯兆円にするぞ!とか時価総額を◯◯兆円にするぞ!とか言っていますが、果たしてそのことに意味があるのか。単なるゲームのハイスコア更新と何が違うのか? って思うのです。

どう増やすかよりどう使うか

そういう中でこのところいつも思うのは、どう増やすかよりもどう使うかです。平均的な会社員の生涯給与が3億円くらいだということを考えると、数億円の資産があれば死ぬまで生活に困らないことは分かりきっています。

 

ではその資産を何に使うか。資産をさらに増やすよりも、どう使うのかのほうが大事じゃないかとぼくは思います。

 

ただ、別に世のため人のために使うことが大事だとか、全く思っていません。くだらないことに使えばいいし、自分の満足のために使えばいい。ただ、とにかく増やすことに邁進するよりは、どう使っていくかのほうが価値ある内容じゃないかと思うだけです。

 

こういうところでも、ほんと、心の底からDIE WITH ZERO主義者なんですね。

 

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FIRE者は拝金主義か?


SALLOWさんが先日Xで絡まれていました。絡んでいる輩は「ただの成金」「拝金主義」とポストしていましたが、さてそれに対するSALLOWさんの反論はどういったものだったでしょうか。

「成金」「拝金主義」

SALOWさんは次のようなポストで「成金」呼ばわりされた上、

さらに「拝金主義」とまで言われています。

対するSALLOWさんの回答は、次のように「拝金主義ならFIREして無職になっとらん」というものでした。

金持ちは金に執着していないという現実

このやりとりけっこう面白くて、金を持っていない人は「成金」「拝金主義」といって持っている人を揶揄しますが、これこそ自分が金を持っていないことによる妬みであり、逆に金を持っている人は金に全然執着していないことを端的に示しています。

 

そもそも成金とは次のような意味をもちます。

「成金(なりきん)」は、短期間に急激に富裕になった人を指す日本語である。語感には通例、揶揄・蔑視が含まれる。

そしてなぜ成金が揶揄にあたるかというと、日本社会では「地位・財産は世襲的に積み上げるもの」という暗黙の規範が根強く、急速な成功者は「金はあるが教養や品格が伴わない」とみなされやすい傾向にあったからです。そこで「成金」は、単なる経済状態ではなく文化資本の欠如を含意するレッテルとして機能してきました。

 

ただ現代日本で「親が金持ちだった」人と、「自分で成功して財をなした」人のどちらが称賛されるかを考えてみると、成金のニュアンスも変わってきたように思います。

 

また、拝金主義とは次のような意味です。

金銭・利益を至上の価値とみなし、それを追求する思想や態度を指す日本語。英語の materialism や money worship, mammonism に近い。

つまり「金さえあればいい」という姿勢を示すもので、必要以上に金を増やす行為なども入ってきます。

 

でも本当に拝金主義者ならばFIREするか? というのがSALLOWさんの指摘です。FIREをした人は誰でもそう言いますが、早期リタイアなんてしないで働き続ければさらに多くの資産を手に入れられたことは間違いありません。その額は人にもよりますが億の単位になるでしょう。

 

その億単位の金を諦めて早期退職し自由を得たわけで、これは金銭を至上の価値とみなす拝金主義とは正反対の考え方です。

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お金があることで逆にお金から離れられる

想像でしかありませんが、他人を「成金」「拝金主義」と罵る人は、自身が「拝金主義」的思考を持っていて「成金」に憧れる人ではないでしょうか。都会に憧れる人が罵り言葉として「田舎者!」というように、人は自分のコンプレックスを罵倒語として使うからです。

 

そしてFIREした人たちと話しても、「さらにお金を増やしたい」という人はまずいません。というか今のところ皆無です。彼らと話していると「どう使うか」という話ばかりで、僕が一番増やすのに熱心じゃないか? と思うくらい。

 

FIREを決断した時点で、「必要以上のお金は不要」と達観しているので、お金に関しては意識から消している人も多いというのが僕の印象です。お金については考える必要もない。これが真のFI(Financial Independent)だともいえるでしょう。

 

世の中の富裕層がすべて拝金主義ではないというつもりはありません。しかし、ことFIREした人については、拝金主義というのはありえないというのがわかっていただけるのではないかと思います。

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FIREした人に他責思考はいない

Xでのやり取りをきっかけに、FIREした人とお会いすることが多いのですが、そこには共通した特徴があります。他責思考の人が全然いないということです。他責思考というのは何か問題が起きたときに「これはアイツのせいだ」とか「政府が悪い」「景気が悪いのが原因だ」など、責任を外に求める考え方のことです。では、なぜFIREした人に他責思考の人はいないのでしょうか。

自由には責任が伴う

FIREとは一義的には「経済的に自立して早期リタイアする」という意味ですが、僕は「お金で自由を買うこと」だと思っています。経済的に自立というのは、日々の労働に頼らなくても生きていける資産を持つということで、要はお金がたっぷりあるということ。そして早期リタイアというのは、働いていれば得られたであろう賃金を放棄して自由な時間を買ったということを意味します。

 

要するに、定年退職までの10数年を1億円ちょっとで買う行為がFIREなわけです*1

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こうやって高い値段で自由を買うわけですから、相当に自由の価値を評価しているはずです。自由なんて不要だという人はそもそもFIREなんてしないで、楽しく働いているはずですから。

 

ところが、エーリッヒ・フロムが言うように誰もが自由を望むわけではありません。人に言われたとおりに毎日を過ごすほうが楽、自分で考えるよりも権威に服従するほうがいいと考える人が一定います。

それはなぜか。自由には責任が伴うからです。そもそも自由とは、物事を自分で決める権利を持つことです。自分で決めた以上、その結果に対する責任は自分にあります。この自由を「望ましい」「ほしい」と思う人と、「責任を負いたくない」と考える人と両方がいるわけです。

業績不振を社員のせいにする社長

たまに業績不振や不祥事を社員のせいにする社長がいます。「社員の力不足が原因」とか「皆さんにも責任がある」など発言して炎上するのが定期的に起こります。言うまでもなく、社長は会社の中で最も自由を持つポジションです。株主とのやり取りでさえ、敵対的買収に対して数々の防衛策があるように、自らのポジションを守るために社長が取り得る選択肢は多いのです。

 

自由と責任がセットだと理解している社長なら、社員が力不足なら再教育するなり入れ替えるなり、その自由を(ある程度)社長は持っています。そして業績を上げる責任があるのは経営陣であって、その方針のもとに働く社員には執行の責任はありますが結果に対する責任は存在しません。そのあたりを履き違えている社長が上記のような発言をするのでしょう。

 

ただ逆にいえば、そのくらい社長が負っている責任は(人によっては)重いということなのでしょう。こうした責任を負っても自由がほしいのか。そう思える人ならFIREに向いていると思います。

究極の自由、FIRE

自由を束縛するものはいろいろありますが、2大巨塔が、「お金」と「仕事」でしょう。この2つに束縛されない状態こそが、自由に近い状態。逆に、お金に不自由していたり、仕事のせいでやりたいこともできないなら、それは自由ではありません。

 

そう考えると、金銭的に自立して、そのお金で仕事をしないでいい自由を買う=FIREというのは、まさに究極の自由なわけです。そしてその自由には当然責任がセットになります。責任というのは、結果に対して他の誰のせいでもない自分の選択の結果だと受け止めること。これこそが他責思考の対極にあるもので、だからFIREした人に他責思考の人がいないのでしょう。

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*1:何円分を買うのかは人によって違いますし、その間の期待賃金額も人によって違うので念のため。60歳定年の会社で年収700万円くらいもらい続けられる人が、45歳でFIREしたら700x15の1億500万円で15年の自由を買ったということになります。

人びとは五十歳でいったんリタイアしてはどうかと思うのだ〜書評『林住期』

作家、五木寛之氏の『林住期』というエッセイをご存知でしょうか。彼は本書の中で、死ぬまで働くことを良しとする考えかたに異を唱え、「人びとは五十歳で、いったんリタイアしてはどうかと思うのだ」としています。

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インドの人生論

林住期とは、古代インドの人生論で、人生を25年ずつに区切ってそれぞれの生き方を説いたものです。

 

学生期(がくしょうき)・家住期(かじゅうき)・林住期(りんじゅうき)・遊行期(ゆぎょうき)の4つからなり、25歳までの勉強して知識スキルを蓄えるのが「学生期」、家庭を持ち一家の大黒柱として働く50歳までの「家住期」、そして75歳までが「林住期」、75歳以降が「遊行期」で人生の終焉に向けて準備をする時期だと言われています。

 

2007年に出された本書『林住期』は、50歳になったら一区切りつけて、新たな人生のステージに向かってもいいのではないか? という提案でした。

乱暴な言いかただが、私は、現代に生きる人びとは五十歳で、いったんリタイアしてはどうかと思うのだ。実際には六十歳、それ以上まで働くこともあるだろう。しかし、心は、五十歳でひと区切りつけていいのではあるまいか

仕事=人生ではない

その背景にあるのは、60歳前後で仕事が定年になると、人生の花形の時代が終わったと考えるような風潮です。20代で社会に出て仕事をバリバリやる。これはこれで重要なことですが、引退してしまうと、まるでその人の人生が終わったかのように感じたり、見たりすることがありますね。引退後を「余生」なんて呼ぶのも、似た考えかたでしょう。

 

そうではなくて、50歳からの25年間こそ人生の最も豊かな時期になり得るという可能性を想像することが重要だと、五木氏は説きます。それは、社会から身を引く60歳を、人生の「臨終期」のように考えることをやめようということもあります。

「林住期」を人生の黄金期と決意することから、新しい日々が始まるのだと私は今つよく思う。

このブログでも何度も書いていますが、労働は大事なことですが、人生で最も重要なことではありません。お金を稼いだり、成果をあげることのために働くのも重要でしょう。でも、生きること自体のために生きるというのも、人間の本性だと思うのです。

働くために生きる、という思想は、この国には古くからある。日々の労働こそ尊い、という考えかただ。

私はそのことに反対ではない。人間はどんなことにでも生き甲斐を見出そうとする本能がそなわっているからである。

しかし、生きるために生きる、ということこそ、現代人に残された数少ない冒険の一つではないだろうか。

50歳までに義務を果たし終えたら本当に自分がしたいことをしよう

25歳から50歳までの25年間、税金を払い国民として国家や社会に貢献し、子供を生み育て家庭を守ってきた。そんな人は、50歳以降、義務を果たし終えて、初めて、自分本来の人生に向き合うべきだと筆者はいいます。

私がくり返し提言しているのは、「林住期」に対する価値観の変革である。人生の真っ盛りを「家住期」としてとらえ、そこをピークとしてみる従来の考えかたを、根底から打ちこわすことが必要なのだ。

人間は、国家や社会制度に貢献するために生まれてきたのではない。子供や、妻や、家庭に奉仕するために世に出たのでもない。

たしかにそれは社会に暮らす者の、尊い義務ではある。そして義務は誠実にはたされなくてはならない。しかし、義務とは他のために献身することだ。「家住期」において十分にその義務をはたし終えた人間は、こんどはまさに自己本来の人生に向き合うべきだろう。

林住期には、金を稼ぐことを目的とする必要はありません。自分がやりたいことを、やりたいからやる。こうした考えかたは、とてもFIRE思想と似ていると思いませんか? 少なくとも、資産を作り生活のために働かなくてもよくなったら、ポストを後進に譲り、自分は金のためではなく自分のやりたいことをやる時間に突入したい。そんなふうに思ってきました。

人間には、本当に自分がしたいと思うことをする自由がある。それがないとみえるのは、「家住期」にいるからだ。

「林住期」とは、そこを抜け出していい、とう時期である。まさにそれが許される時なのである。

 

私は「林住期」にすることは、すべて「必要」からではなく、報酬とビジネスを無視してやるべきだと考えているのだ。

何をやってもいい。とにもかくにも、それで金を稼ごうなどとは思わないことである。

FIREしたら働くべきか否か。そんな議論もたびたび聞きますが、FIREというのは経済的な自立がテクニカルな重要概念で、REというのは「金のために働く仕事から離れる」ことを意味すると思っています。その意味では、FIREとはまさに五木氏が捉える林住期の考えかたと同じだといえるのではないでしょうか。

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FIRE達成者によるFIREの成功要因

FIREを達成した人は、いったいどうやって達成していると思いますか? 今回はXで、FIREを達成した人に、その成功要因を聞いてみました。Xで交流のある方々にはFIREを達成した方がたいへん多く、けっこう信頼できる調査になってるんじゃないかな? なんて思っています。

FIRE達成者によるFIREの成功要因

その結果はこちら!

もちろん、実際にはこの3つの複合要因になるでしょう。ただ、FIRE達成者が「何が最大の要因だった」と考えているかにポイントがあります。それは「入金力」だったわけです。

入金力の重要性

実にほぼ半数が挙げた入金力。実はこれ、収入が多かったということを意味しません。年収1000万とか2000万円でも、貯蓄がゼロに近いという人はけっこういます。重要なのは、収入の何パーセントを貯蓄や投資に回せたかです。

 

なぜ「いくら回せたか」ではなく「何パーセント回せたか」なのでしょうか。それは入金した残りで生活することから、間接的に生活レベルも表しているからです。例えば、毎月100万円入金している人でも、月の収入が2000万円あるなら、一生FIREなんてできません。月に1900万円も生活費がかかっているわけですから。

 

入金力が高かったと答えている人は、高収入な人と収入の多くを入金に回していたという人の両方が含まれていると思います。それでも、この入金力を高めることこそが、FIREを達成した人の多くが明かす、成功の要因なわけです。

運用の意味合い

FIREと運用は切っても切れない関係にあります。入金力が高ければ貯金だけで資産を作ることも不可能ではありませんが、運用でそれをブーストすることができます。

 

今回の調査では、約3割がFIRE成功の要因として運用を挙げました。ここは感じ方の問題なので、インデックス運用にフルインベストから、個別株投資、デイトレード、不動産によるレバレッジ投資、仮想通貨などなど、さまざまな運用手法があり、どれが主要因かは分かりません。そして正解も分かりません。

 

収入が高くなくても、また生活費を絞り込まなくても、運用の方法によってはFIREできるほどの資産を作れるという希望の光を見られる結果かもしれません。

相続など本人以外の要因

こちらが2割ほどあったのは、ぼくとしては意外でした。でも、よくよく考えると、この要素は大きい。そして謙虚な人ほど、これを成功理由として挙げるんじゃないかと思うのです。

 

たとえば、親が大学の学費や生活費を出してくれたかどうかは、スタート地点においてものすごい大きな差になります。多額の金品でなくても不動産を相続したという人も多いでしょう。都内の不動産であれば、それだけで億単位の資産になります。

 

FIREに関して、すべて自分の能力と努力の結果だと思うのはある種傲慢な考えで、少なくとも親にさまざまな支援をしてもらったことを無視してはいけないのだと気付かされます。

九条の場合

では振り返ってぼくはどこに一票入れるかというと、「入金力」です。親に大学まで出してもらったという意味では「本人以外の要因」もありますし、数百万円ですが相続した金品もあります。それでも、意識的に節約してインデックスを買い続けた日々があったからこそ、現在の資産があると感じるのです。

 

運用については、多少はうまくいったという想いはあります。記録の残っている2008年から現在まで、入金を加味しない各年の算術平均リターンは15.5%となっています。これは控えめに言っても誇れる運用トラックレコードだと言えませんか(笑)

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それでも、ここに入金を加味したインベスターリターンは年率24.1%に達します。幾何平均リターンは21.4%となっていて、これは、10年で7倍、20年で48倍になるというリターンで、実際17年間で資産額は30倍になっています。

 

これが入金力の効果だということですね。

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1億を老後資金、1億をスーパーカーの購入に、そして1億を子どもたちに遺す

ぼくが株クラでお会いする方の中には、すでに資産形成を終えていて取り崩しに入っている方がけっこういます。そうした方とお話するときに話題になるのは、どう資産を増やすかというよりも、どう資産を使うかという話。素晴らしい使い方をされている方を参考にさせていただきましょう。

資産運用でスーパーカーを手に入れる

年末に、投資家のWATANKOさんのフェラーリ328GTSに乗せていただきました。328GTは「歴代フェラーリの中で最もフェラーリらしく優雅で美しいとされるモデル」でです。3200ccV8エンジンをミッドシップに積み270馬力を生み出します。

 

低くそして優雅なピニンファリーナデザインは、今見てもまったく色褪せない造形ですね。下記はWATANKOさんのブログです。

watanko26.blog.fc2.com

WATANKOさんの真っ赤なフェラーリは1987年式。実に37年モノになるわけですが、すっごくきれいでネオクラシックの筆頭という感じがしました。タルガトップを空けて、高速から海沿いへと、フェラーリサウンドを後ろに聞きながら楽しみました。ぼくもスーパーカー世代の一人で、子どもの頃からの念願かなって空冷ポルシェを手に入れた一人なので、この時代のクルマの面白さ、カッコよさというのが分かるつもりです。

3億円の使い道

さてWATANKOさんは投資で3億円作るのが目標だったと話していました。その3億円の使い道は、1億円が老後資金として、1億円をスーパーカーの購入に、そして1億円を子どもたちに遺すと。いや、これ、ほんと素敵な考え方ですね。

 

WATANKOさんは328GTS以外にもポルシェ911(Type922)もお持ちで、さらに日常の脚としてBMW118d、さらにルノートゥインゴもお持ちです。そしてさらに3台目のスーパーカーも検討中とのこと。

 

1億円をスーパーカーに充てるとなると、正直だいたい何でも買えますね。乗り換えを想定するなら、ほんと、乗りたいクルマを次々と所有することも可能でしょう。20年を超えたネオクラシックカーは、買ってから値段が落ちるということがほとんどありません。それどころかタイミングによって高くなることもしばしばあって、実質投資しているのと同じようなもの。希少価値はどんどん高まっていくし、新しいクルマのほうが魅力的とは言い難いからです。

 

例えば2000万円でスーパーカーを買っても、数年後に別のスーパーカーが欲しくなって手放すとき、1700万円くらいでは売れたりするものです。下手な国産車を乗り潰すよりも全然値落ちがないですね。そして走行距離がそこまで伸びないこともあり、維持費もそれほどかかりません。

 

基本的に老後資金として自宅以外に1億円あれば、そうそう困ることはないでしょう。WATANKOさんの場合は、さらに親から引き継いだという不動産がけっこうあり、これだけでも食べていくには困らないとのこと。

 

なるほど自分の趣味に1億円充てようというのは、けっこう合理的です。ただ、このところの株高で、WATANKOさんの資産は5億円超まで増えてしまったようで、これだとスーパーカー予算が3億円まで増えちゃいますね。

自宅を買うという選択肢

FIRE後、積極的に支出して人生を謳歌している印象があるのが、投資家のエルさんです。米国株インデックス運用を中心としつつも、日本個別株で運用しているエルさんは、まったく働くことなく、年間1400万円くらいを支出しているそうです。賃貸ではなく自己所有の自宅とくことで、かなりいろいろなことにアクティブに使われていますね。

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これだけの支出をしながらも、2024年は資産が17.5%増となったということで、さすがの投資家です。

 

さてエルさんは直近都内に新築マンションを購入したそうです。株式をそこそこ売却したということで、2024年の確定利益は3800万円超*1。これらの資金を使い、現金で購入したそうです。2021年に千葉に購入したマンションを手放しての買い替え、4度目の自宅購入だということですが、賃貸でなくてもライフスタイルに合わせてフットワーク軽く買い替えていることが印象的です。

 

別の方からも「自宅を買った。現金で」という話を聞き、なるほど、自宅を買うというのも一つの選択肢だなとけっこうマジメに思いました。

重めな支出

(しっかりとした)FIRE済みの人たちに共通するのは、自分のライフスタイルや生活費をちゃんと把握した上でFIREしているため、定期収入がなくなっても通常運転なら資産が減るどころか増えてしまうことです。

 

そうした中、WATANKOさんのように1億老後、1億遺産、1億スーパーカーみたいに考えないと、DIE WITH ZEROには至りそうもありません。では1億円単位で使える支出って何があるかな? と思うと、

  • 子どもの教育
  • 不動産
  • クルマ
  • 事業

くらいしかパッとは思いつかないんですね。あとは旅行くらい? 300万円くらいかけた旅行を年に6回行くと、年間1800万円。これを10年続ければ2億くらい使うことになるわけで、けっこう使い出がありそうです。

 

そうはいっても20年間身に染み付いた体質は変わらないようで、例えばランチでワンクラス上のメニューを選ぶかとか、食後のコーヒー300円を追加するかとか、最近は意識的にこういうことを解禁してきたものの、それでも抵抗感があるんです。

 

資産形成にはベストプラクティスも理論的な最適解も存在していてまさにサイエンスなのですが、支出のほうはアート。何に価値を見出すかは人それぞれで、正解がない世界だと思います。そして節約のほうはサイエンス的ですが、消費(浪費?)もアート。 何にお金を費やすかというセンスを磨いていくのが、2025年のぼくの目標の一つです。

 

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*1:言わずもがなですがこれは利益で、別途元本部分もありますね

再現性のあるFIRE

先日Xの株クラで話題になったのが「再現性のあるFIRE」でした。これは、FIRE本の著者に対して、読者が求めているのは再現性のあるFIREであって、贈与や相続で得たお金でFIREする内容じゃない――という流れで出てきた話。でも、再現性のあるFIREってなんでしょう。そんなのあるのでしょうか。

親からの贈与でFIREしても参考にならない

FIREにはいろいろな亜種があって、「やりたくない仕事を続けるより自由に生きよう」というRE軸と、「資産があれば経済的に自立できる」というFI軸があります。

 

RE軸は、昔から名前を変えて存在しています。例えば副業を主軸に据えて生きていくと決めた人や、ちょっと前のフリーランスブーム、古くはノマドとかギグワーカー、さらに古のフリーターとかもそう。

 

なので資産による経済的自立を意味するFI軸のほうが、ぼくはFIREムーブメントの本質だと思っています。そのため、ここでもRE軸ではなくFI軸に限って考察します。

 

閑話休題。昨今のFIRE本の多く、というかほとんどは、「これを読めばあなたもFIREできる!」という内容になっています。その構成としては、

  1. 自分はこうやってFIREした
  2. だからこの手法があなたにも参考になる

というものがほとんどです。だからその人がどうやってFIREしたかが重要になります。親からの贈与でFIREしたといわれても、全然自分の参考にならないじゃないか! というわけです。

突き詰めるとFIREは運?

ただじゃあほかにどういうFIRE達成者がいるかというと、方向性は大きく次のように分かれます。実際にはどれか一つではなく、ミックスになるでしょう*1

ではこれらを再現性の面から見てみましょう。

 

大元本−高収入−サラリーマン

は実は最も再現性が高いでしょう。一流大学に入り若くても高収入な外資系に就職するというパターンは、ぼくが考えるに最も再現性があります。実際、FIREブーム前からこの人たちは若くして引退していました。もうしばらく前ですが、早期引退した、元GSの日本支社の営業トップを務めていた人と食事したこともあります。

 

ただこの再現性高いルートは、当たり前過ぎてコンテンツになりません。「FIREしたいなら東大に入りましょう」とか「FIREしたいならマッキンゼーに入社しましょう」とか別ジャンルの本になってしまいます。

大元本−高収入ー一発系

は昨今意外に再現性が高いと思っています。ただ起業すれば誰でも成功するわけではない上に、優秀であってもかなり運の要素がつきまといます。IPOしそうな企業に入ってストックオプションをもらうという方法も相当運で、ストックオプションをもらったものの上場できなかったというのは、思う以上に多いものです。

 

ぼくはこのストックオプションと運用系のミックスでFIREした人間ですが、実はストックオプションは3社からもらったものの、その中でストックオプションを行使できるまでになったのは1社だけでした。

参考:就活生に告ぐ ストックオプションをもらいなさい - FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

大元本−節約系

は最も再現性が高いとぼくは思っています。結局のところFIREには多かれ少なかれ節約は必要で、相当な収入や資産があっても、ZOZOの前澤さんのような金の使い方はできません。同じ資産額なら、FIREした人のほうが使えるカネは少なくなるのは自明です。

 

極端な話、「三菱サラリーマンさん」がなぜFIREできたかというと、高収入であることがポイントではなく、収入の8割を入金し運用に回したことが大きいわけです。ただ、節約FIREは話を聞くには面白くても、自分でそれを実行したいかというと違う。そんな人が多いので、書籍にはなりにくいか、FIRE本ではなく節約本になってしまいそうです。

運用−株式系

は今でもFIRE本の主流でしょう。ただし大きな元本ではなく高い運用成績によってFIREしようと思ったら、株式インデックス平均リターンの6%程度では物足りません。なので、FIREを高めるならインデックスではなく個別株とか、レバレッジをかけるとかが必要なのですが、FIRE志望の人にはそういう方向性が嫌いな人が多いようで、あまり見ませんね。

 

逆に株式インデックスの平均リターンを下回ることが多い高配当系はなぜか人気です。ほんとなぜなんでしょう。いずれにせよ、個別株や信用などレバレッジで再現性高く勝てるなら誰も苦労しないわけで、一発人生逆転の可能性はあるものの最も再現性は低いと考えます。

運用−不動産系

はあまり話題になりませんが実は再現性が高かったFIRE手法だと思います。まず不動産投資にはけっこうな元手が必要でかつ与信もいるので、必然的に大元本−高収入系とセットになります。そして現在までの数十年は金利が非常に低く、フルローンやオーバーローンなど融資姿勢も緩和的で、かつ不動産価格が上昇を続けるという相場でした。

 

大元本−高収入系の人なら次々と都心の不動産を買っていくだけで、労せずFIREしていきました。そういう人は何人か知っています。ただFIREは株クラの名称なんで、不動産FIREという言葉はほとんど聞きません。また、金利上昇局面で不動産が割高な今から今後は、本当に再現性があるのかは不明です。

運用-仮想通貨系

たくさんの億り人、FIRE者を排出してきました。リアルに何人か会ったこともあります。みんなとても若いことが特徴で、30代、下手したら20代で数億円という資産を築いています。方法も簡単で、ビットコインを買って持っているだけ。本当にこれだけでした。

 

では再現性という面ではどうでしょう。はっきり言って仮想通貨投資によってFIREするには、旬は過ぎてしまったというべきではないでしょうか。ビットコインのリターンは年々低下しており、多くの人が保有し、ETF化するなど既存の金融に組み入れられてきた昨今、以前のような爆発的なリターンは望めず、行っても年率で100%がいいところではないでしょうか。

 

では草コインはというと、詐欺と運の塊なので、ビットコインの夢再びを追うには再現性は皆無に近いのではないかと思います。

結局、再現性の高いFIRE手法は?

まとめてみましょう。再現性が高いものを◯、まぁまぁを△、あまりないよねというのを✗とします。

  1. 大きな投資の元手を作った
    1. 収入が多い
      1. 高収入サラリーマン系◯
      2. 起業やIPOなど一発系 △
    2. 倹約した ◯
  2. 少ない元手を運用して大きくした
    1. 株式系 ✗
    2. 不動産系 ✗(以前は△)
    3. 仮想通貨系 ✗(以前は△)

というわけで、ぼくの私見では、「少ない元手を運用して大きくした」、非常に再現性が低く、逆に高収入を目指したり倹約を突き詰めたりといった「大きな元手を作った」系の再現性は高くなっています。

 

ただし書籍の読者が求めるのは「あまり元手もなくて高収入でもないあなたでもチャンスがある!」という系統ですよね。なので、ほとんどのFIRE本は成功体験本&読み物として読むべきで、そこに生き方や投資に対する考え方のヒントを得られればOK。再現性なんて求めてはいけないのです。

 

もし再現性高いFIRE理論を求めるなら、海外留学してMBAを取るとか医師や弁護士などの資格を取るとか、一念発起して企業したりスタートアップに転職するほうが近道かと思います。ただこういうノウハウを語った本は、FIRE本ではなく参考書とかかも。

 

また運用系FIRE本には情報商材系や詐欺に近い系も紛れ込んでいる場合もあるので、注意です。「FIREセミナー!」というので興味津々で行ってみたらワンルームマンション投資の話だったというのも横行していますので。

 

というわけで、あくまで私見ですが再現性のあるFIREを求めるなら、いかに収入を増やすかという王道を進むことです。その上で、同業の人たちよりも生活レベルを抑えて倹約する。逆に、運用については株式インデックス以上の成果を望みすぎると足をすくわれます。この10年ほどはたいへん市況が好調で10%以上のリターンを上げる人もたくさんいましたが、それがレアだったと考えないと、FIREどころかせっかく貯めた資産を目減りさせることにもなりかねないからです。

 

ちなみに、本当に再現性を求めるなら節約&株式インデックスの手法が確実でしょう。下記の記事でシミュレートしたように、月34万円の手取りの半分(17万円)を卒業からずっとインデックス投資に回せば、50歳時点で資産が1億に達することになります。月17万円で生活を続けてきたわけですから、2%取り崩しでその後も生きていける計算です。

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*1:ぼくの場合、元手:収入:IPOと、運用:株式、運用:仮想通貨 のミックスです。収入が多いの中には、譲渡や相続が元手になっている人もいるようですが、それをここに入れるのははばかられます。

「FIRE願望で人手不足が深刻化しインフレ圧力に」みずほレポートが話題


8月29日に出たみずほリサーチ&テクノロジーズのレポート『単身世帯化と日本経済への影響 FIRE願望と結びつくと人手不足は深刻化』が話題になりました。このレポートを読み解くとともに、思ったことをまとめておきたいと思います。

単身世帯&FIRE願望で人手不足加速

このレポート自体は5ページという短いものなので簡単に読めますが、内容をざっくりまとめると次のような流れの論になります。

  1. 単身世帯が増加している
  2. 単身世帯は早期退職傾向が強い
  3. FIRE願望はもちろん早期退職につながる
  4. 単身世帯増+FIREで人手不足に
  5. 消費は減らないのでインフレ圧力にも

具体的な数値は明らかにしていませんが、単身世帯の増加と、そのFIRE化で2050年に200万人くらい追加で労働力人口が減少するというのが、このレポートでの試算です。

単身世帯はなぜ早期退職するのか

このロジック自体は素直なものであり、その通りだと思います。ただ、背景となる「なぜ単身世帯が増加しているのか」「単身世帯はなぜ早期退職するのか」「なぜFIREがブームになるのか」というあたりの考察は、なかなかに面白いものがあります。

 

まず「単身世帯はなぜ早期退職するのか」を考察してみましょう。著者の仮説は次のようになります。

  • 遺産を残したいという動機はない
  • 子育て費用(3000万/人程度)が不要でお金が余る
  • 夫婦で長時間一緒にいるストレスがない

結婚して子どもを育てるのに比べて生涯でかかるお金が少なく済み、かつ結婚していると「亭主元気で留守がいい」と言われるように、自宅にいることがネガティブに捉えられるために働いている層が一定いると考察しています。

 

これらはそれぞれ納得感ありますね。ぼくは子どもこそいるものの、基本的にDIE WITH ZERO思想で遺産を遺したいとは思っていません。またコロナ禍でリモートワークがメインになったため、夫婦でずっと自宅にこもるという数年を経験しました。これがFIREの予行演習となったわけですが、これがなければ自宅で妻とずっと顔を突き合わせることへの躊躇や、妻からなにか言われるかもしれないということがブレーキになったかもしれません。

単身者はなぜFIREするのか?

ではもう一つの背景である、なぜFIREブームが起きたのかについては、筆者はあまり踏み込んでいません。注のなかに、

FIRE が流行語となる一方で、「できるだけ長く働きたい(働かざるを得ない)」人が多いとのアンケート結果も存在しており、「現在の 20~30 代」が 2050 年頃に 50~60 代になったときにどのような就業スタンスをとるのかは、結局のところよくわからない(なお、筆者(30 代)自身は強い FIRE 願望を持っており、FIRE 側に共感する)。

と書いていて、条件が満たされれば人はFIREしたいものだよねというは、ほぼ所与として扱われています。

 

また、「労働とは専ら金銭を得るための手段であり、労働自体は嫌なことである」と前提をおいて論を進めている点にも注目です。「実際には労働自体に「やりがい」を感じる人も少なからず存在するのだろうが」とも書いているものの、基本的に労働は嫌なことであるというこの労働観は、FIRE志望者にほぼ共通するものでしょう。

 

昨今は「やりがい搾取」なんて言葉も生まれたり、「やりがいとか言わずに給料を上げろ」という言葉もよく聞くようになりました。労働というのは金銭を得るために自分の時間を差し出す行為であり、本当にやりがいを求めるのなら、FIを達成した上で好きなように仕事をしたらいいということが、世の中に広まってきた感もあります。

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人手不足が深刻化しインフレ圧力になって何が悪い?

さて、一応このレポートの結論は人手不足が深刻化しインフレ圧力が高まるというものですが、ここでぼくが言いたいのは、人手不足が深刻化したりインフレ圧力がたまると何が悪いの? ということです。

 

そもそもここでインフレ圧力が高まるとされているのは、FIREした単身世帯はそもそも貯蓄率が低く、積極的に消費を行うからです。早くからFIRE目指して資産運用を行っていて、かつ遺産を残そうとも思わないのでDIE WITH ZERO方向へ進む。あれ、これってみんながよくいう「もっと消費を活発化させれば景気が良くなる」って話と同じじゃないですか。

 

消費が活発になれば景気もよくなりますが、需要が増加するということでインフレにもつながります。そして労働人口が減少すれば人手不足になるわけですが、それはつまり賃金上昇をもたらします。

 

デフレを脱却して恒常的なインフレ経済になり、賃金上昇も継続する――。これって政府も日銀もみんなが望んで向かおうとしてきたゴールですよね。FIRE願望がそこにつながるなら、全然いい話じゃないですか。

 

日本という国単位かつ長期で見たら、人手不足はこれまでの産業構造や社会構造を成り立たせなくするという意味で課題でしょう。ただ、今の日本を存続させるために日本人がいるのではなく、日本人がなりたい姿をサポートするために社会契約上、日本という国が存在するのです。そう考えれば、こういう流れも悪くないと思うわけです。

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FIREした人たちの話題ーー何にお金を使うか?

FIREした人たちが集まると定番で出てくる話題に「何にお金を使うか?」というのがあります。サイドとかバリスタとかは別として、FIを達成してREした人のほとんどは、こういう心境になっている人が多い。今回、FIREされた人たちとのランチでも、この話題が出ました。

昼からスパークリングのボトルを。

先日、エルさん無常さんMISAさんとFIREランチをごいっしょしました。そういう属性の方たちなんで、ついついスパークリングワインのボトルを注文(写真を取り忘れました)。あ、ビールも飲みました。いい感じにほろ酔いのお昼でした(僕ばっか飲んでた気もしますけど)。

 

サラリーマンではなかなか実現できない、こういう会ができるのがFIREすることの良さですね。

何にお金を使うか?

さて、このランチの話題の一つが「何にお金を使うか?」でした。僕自身もこれにはいつも頭を悩ませていて、同じように悩む方が多いのはなんらかFIREしている人の共通点なのかもしれません。

 

世間のお金持ちというと、まぁ優雅な生活をしていて湯水のようにお金を使っている人もいますね。これはお金持ちの特権であって、それはそれで楽しい生き方なのでしょう。ただ思うのは、こうした人達はFIREなんて絶対目指しません。どっちかというと「もっと稼いでもっと使うぞ!」というタイプ。お金は天下の周りものというくらいに、ガンガン使う人が多い感じです。

 

一方でFIREされた人は、ある意味、こういう経験を乗り越えた先に生きている感じがあります。よく言えば老成している。悪く言えば枯れた(?)感じでしょうか。ぼくだけかもしれませんけど。

 

欲しいクルマもだいたい買って乗り回したし、ブランド品の時計とか服とかそういうのも一通り試したし、少なくとも見栄的な何かはさっぱり不要。「そういうの、もういいよ。お腹いっぱいだし」というのが、僕の心境です。

旅行、住居、エンタメ

ではそうした中で何にお金を使うのか。出てきたのが旅行、住居、エンタメでした。

 

旅行はイメージ付きやすいですね。死ぬまでに資産を使い切ろうと説く『DIE WITH ZERO』では、思い出になるような経験にお金を使おうといいます。お金の価値は年齢によって違っていて、同じ内容の経験でも年を取るほど色褪せる傾向にあります。旅行などの経験にお金を使うのは、いい使い方ですね。

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もう一つ多かったのが住居でした。ご家族の成長ということもあり、新居を買われる方も。正直FIREすると住宅ローンが組めなくなるため、家を買うのはかなりハードなぁ……と思って半ばあきらめていたのですが、現金で買うということでした。なるほど。確かに現金で買うなら問題ありません。家のように担保価値が大きいものなら、つい借り入れしないと損な気分になってしまう僕のほうがおかしい感じですね。

 

そして、映画やゲーム、スポーツ観賞、コンサートなどのエンタメも定番だといえます。特に「推し」系は、時間の自由があってお金も使えるとなると、どこまでも推せる感じ。これもいいですね。

 

無常さんが、森博嗣氏の書いた『お金の減らし方』をベースに、

私自身は、森氏の主張を少しアレンジして、「必要なことはなるべく少なく、好きなことはなるべく多くお金を使う、それ以外の無意味な支出は限りなくゼロにする」というのを「お金の使い方」の基本方針にしてます。

無常生活 | 【知恵3】「欲しいもの」はなんでも買う、「必要なもの」はできるだけ我慢

とおっしゃっていて、これは理想的な使い方かも。と思いました。人生を有意義に生きるには、必要なものを買うよりも、一見贅沢品で不要に思える欲しいものにお金を費やしたほうがいいともいえるのです。

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ちなみに若い頃『なぜ安アパートに住んでポルシェに乗るのか』を読んで、なるほど!と思ったのですが、お金は見栄のためではなく本当に欲しいものに使うということに確信を持つことにつながりました。

さて何に使うか?

さてでは自分自身は何に使うか。旅行、住居、エンタメはおっしゃるとおりで、ここについては基本的にケチらずに使っていこうと思っています。ただ、ものすごい贅沢旅行がしたいわけでもなく、そもそも旅行好きというわけでもないので、海外に行くにしても年1回くらい。エンタメはそこまで推せる対象がみつかっておらず、かかる費用にも限度があります。

 

となると住居なわけですが、うーん。現金で買うというのはさすがに勇気がいりますね。都心の大きな家が必要だとしても、子どもたちが巣立つまでの数年間くらい。賃貸でもいいかな? というのが今の実感です。そのうち、狭くても便利な駅前とかのマンションを現金で買ってもいいですね。

 

さてそれ以外は? というと、やっぱり寄付を真剣に考えたい。今回のランチでも、みなさんいろいろと寄付をしてるんですね。ただあまり表立っては表明していない。ぼくも、これまで東日本大震災への義援金とか送った経験はあるのですが、なんとなく表立って「寄付しました!」みたいにいうのが憚られました。寄付を偉そうに自慢してるんじゃねーよ!みたいな感じがあって。

 

でも、思いつきではなく定常的に寄付をするとなると、どんな観点でどこを選び、どのように寄付をしたかという情報は本当に少ない。探してもそういった「ぼくはこういう観点で寄付をした」というコンテンツが見つからないのです。であれば、僕の経験を書いていくことも価値があるのではないか。寄付をしたいけど、どうしたらいいか分からないという人の参考に、多少はなるのではないか。そんなふうにも思ったりするのです。

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REの勇気が出せない〜FIREの「メンタル」について

Xで匿名相談を受け付けているのですが、今回「REの勇気が出せない。メンタルについて悩んでいます」という長文の相談を受けたので、こちらブログにて回答したいと思います。

FIREのメンタル、「RE」の勇気が出ない

はじめまして。いつもブログの理路整然とした議論が好きで拝見しております。
この度はFIREの「メンタル」について悩んでおり、恐れながらメッセージを送らせて頂きました。こんな贅沢な悩みを相談できる知人もおらず。。。

まず自己紹介です。
・20代後半、専門職(個人事業主&マイクロ法人)、年収1200万円、純資産1億円、生活費300~400万円/年、熱中できる趣味なし(強いて言えばTVゲーム)。
・投資方針:基本インデックス+バブルがあれば資金移動(今なら仮想通貨)。
・FIREの動機:仕事は月平均120時間前後で特段苦しいわけではありませんが、責任や期限は少なければ少ないほど嬉しいので、必要が無ければやりたくないです。消極的な理由です。

上記の通り「FI」については達成していると考えているのですが、「RE」の勇気が出せずにいます。具体的には、下記の理由により、仕事を大幅に減らすことを躊躇してしまいます。

■理由
・現状、仕事の時間を削ってまで熱中できる趣味がない。ゲームも仕事の合間の「暇つぶし」として楽しみを感じている節がある。
・FIRE後も、惰眠(寝れるだけ寝てしまい12時間を超えることも)とyoutubeだけの毎日になる可能性を危惧。現在もこの状態です。ただ、仕事があると仕事のことが常に頭の片隅にあって疲れてしまう感覚はあり、FIREしてこそ次の行動のやる気が出るのかなと思ったりしています(希望的観測)。
・働かないことで「落ちているお金を拾っていないのでは?」という強迫観念。
・専門職としての実務経験が陳腐化するという不安(本来、FIREするなら関係ない話ですが)。
・仕事をして喜んでもらえると素直に嬉しい。断るのがつらい。
・社会との繋がりの希薄化の恐れ。この理由もあり、現実的には完全FIREではなくサイドFIREを考えています。
・上記の通りFIREの動機が消極的なので、なかなか覚悟が決まらない。

長文乱文ですみません。。結局ご質問としては、九条さんはこういったFIRE(退職)へのメンタル面の不安はありましたでしょうか?どのように克服し、行動に繋げたのでしょうか?上記の理由について何か思うところはありますでしょうか?
(背中を押してほしいという本音もありますが、)FIRE達成者のマインドを知りたい次第です。

なるほどなるほど。20代後半にして、すでに1億を超える資産があり、でも生活費は300-400万円程度。もう十分にFIは達成しているけど、REの勇気が出ないということです。

FIRE(退職)へのメンタル面の不安

ぼく自身も2018年にFI状態となり、退職はしなかったもののキャリアを降りる選択をしました。その後、2024年に退職。フリーランスとして気に入った仕事だけをつまみ食いしながら過ごしています。

 

さて、「FIREの特にREに対するメンタル面での不安はなかったか?」ということですが、もちろんありました。何しろ、キャリアというのは積み上げていくもので、一回投げ捨てたら、やっぱり元に戻るってわけにはなかなかいきません。それがわかっているから、みんな現在の椅子にしがみつくわけです。

 

それでもキャリアを降りたのは仕事に対して何を求めているのか? を自分なりに突き詰めた結果でした。仕事には大きく3つの側面があります。

 

まず仕事には「お金を稼ぐ」という大きな側面があります。金銭の多寡が仕事の価値ではないというものの、お金が全くもらえない仕事は普通仕事とはいいません。それは趣味かボランティアなのです。

 

もう一つの側面は、「自分の能力を発揮する」という意味合いです。人間は働く意味を考える生き物なので、自分でしかできないことに対しては誇りを感じるようにできています。それを活かしてなにかしたいわけです。逆に、誰でもできる仕事はどうしても「お金を稼ぐ」側面のほうが強くなります。学生時代の飲食アルバイトとかが典型ですね。

 

3つ目が「社会や他者に貢献する」社会や他者に貢献できるかどうかも、重要な意義です。人は利己的な一方で利他的な感情も持っていて、誰かが喜んでくれるとか社会の役に立ったという感覚は非常にポジティブなのです。反対に「誰かに恨まれる」「社会の害悪になっている」という仕事は、たとえお金を稼げてもやりたいという人は少ないでしょう。

 

こう考えると、仕事と向き合うときに「お金」「能力発揮」「貢献」のどれを重視するかが大事な選択肢になります。

「遊ぶ」「お金」「能力発揮」「貢献」の4つの選択肢

通常は仕事にとって「お金」は大変重要な要素です。働くにあたって給与額を気にしない人はいませんし、能力や貢献を測る尺度も報酬”額”になります。ところがFIを達成するとこの世界観がひっくり返ります。もうお金については気にする必要がなくなるからです。

 

つまり選択肢のうち「遊ぶ」「能力発揮」「貢献」の3つだけを意識すればよくなるのです。ブログを書いたりモノづくりをしたり、専門的な知識を持っているならその自分の能力を活かせる何かに取り組むのもありです。ボランティアなどによって誰かを助けるのもいいですね。

 

もちろん、付随的にお金を受け取ってもいいわけで、自分の能力を活かして誰か困っている人を助ける行為をして、対価としてお金を受け取るという選択もあります。あ、これを普通は仕事と呼びますね。でもお金が目的ではなく、能力発揮と貢献を目指したらお金を払ってもらってしまったのですから、順番が逆なのです。

 

ちなみに「遊ぶ」だけはこれらとは次元の違う価値ある内容で、かの有名な『ホモ・ルーデンス』によると、遊ぶことは次の5つの特徴を持つといいます。

  1. 自由な行為である
  2. 仮構の世界である
  3. 場所的時間的限定性をもつ
  4. 秩序を創造する
  5. 秘密をもつ

仕事の何が負担なのかを分解して解消する

さてこうした前提で相談者の問に答えてみましょう。まず、会社勤めではなく自営業なので、退職ではなく引退をするかどうかの悩みですね。

 

現在専門職に就いていて仕事自体は嫌いではないということです。そして仕事を通じて他者に貢献できることを素直に喜んでらっしゃいます。「能力発揮」「貢献」については、仕事の価値として認めているわけですね。

 

ではなぜ仕事を辞めたいのかというと「責任や期限は少なければ少ないほど嬉しい」からだということ。「必要がなければやりたくない」ということなので、現時点では何かしら仕事に”必要”を感じているということなのでしょう。そしてそれはお金ではありません。

 

理由を拝見する限り、仕事自体は嫌いではないのですから無理にREする理由はないと思います。問題である責任や期限に対する負担を減らすのが、解決策になるでしょう。ここからは仕事の内容が不明のため、想像で書くことになりますが、「責任」や「期限」をなくせたら、仕事の負担はなくなるでしょうか?

 

例えばソフトウェア開発を行うエンジニアだったとして、受託開発の場合は「期限までに仕様どおりに完成させる責任」が発生してしまいます。これは確かに心の負担ですよね。ただし、同じスキルを使って「自分で作った仕様に基づいて開発したソフトウェアを販売する」事業に展開すればどうでしょうか。ここには期限も(他者に対する)責任も発生しません。

 

映像制作の仕事をしていたとして、受注した場合は責任や期限が発生しますが、自分だけの責任で映像を作成してYouTubeなどで公開する形なら、どこまでも自分のペースで進めていけます。

 

もちろんこれらは職種によってしまうのは確かです。例えば建設業とか運送業にかかわる自営業では、(ぼくの想像力が足りていないのかもしれませんが)受注なしで何かを行うのは難しいような気もします。医者や弁護士などの士業の場合は、資格の独占業務を行うのではなく、資格の専門知識を活かした事業を別途始めることになるでしょう。業務知識を活かしたソフトウェアの開発とかでしょうか。

 

ただしいずれにせよ、その仕事で必ずしもお金を稼ぐ必要がないという点が重要です。収益を上げる必要がなければ、実は専門能力を活かして貢献する機会というのはいろいろにあるものです。

 

せっかくFIを果たしているのですから、RE=仕事を完全に辞める のではなく、RE=報酬目当ての仕事を卒業する と捉え直してみてはいかがでしょうか。

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